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Ring Story

infini ゆびわ言葉 ®:永遠の絆

2018.09.30

結婚4年目。
お互いの仕事も順調で、夫婦仲も順調。
そろそろ子どもを作ろうか…なんて話していたところで、突然の訃報が飛び込んできた。
夫の母である道子さんが、亡くなったのだ。

道子さんは夫だけでなく、私にとっても特別な人だった。
私は道子さんに憧れて、ホテルスタッフという職業を選んだ。
定年まで30年以上ホテルでコンシェルジュを勤めた道子さんは、接客のプロだった。対応が丁寧なだけでなく、お客様に求められる以上のサービスを常に提供していた。
細やかな気配りができ、楽しませるための世間話やジョークも言える、皆に愛される人だった。

道子さんは、「あなたみたいな子に嫁に来て欲しいの」と言って、息子である照之さんを私に紹介してくれた。
そうして出会った私と照之さんは、互いに惹かれ合い、恋をして、結婚して…つまり、私達を夫婦にしてくれたのも、道子さんなのだ。
どれだけお礼を言っても足りなくて、64歳という若さは、亡くなるにはあまりに早すぎて…。

「…まだ、孫の顔も見せてないのに」

葬儀が終わり一ヶ月が過ぎても、私はまだ事実を受け止めきれず、時々泣いてしまう。
そんな私の横で、ある日、夫がぽつりと呟くように言った。

「結婚指輪、作ろうか」
「え?」
「母さんの骨壺に、ずっと着けていた結婚指輪を入れたんだ。天国に行っても、ずっと父さんや俺達家族のことを思い出せるように」
「…」
「結婚したときは、邪魔になっちゃうし傷ついたりすると勿体ないから、作らないって決めたけど…やっぱり、俺達にもそういうのが欲しいな、って」
「…そう、だね。そうしようか」
「うん」


次の週末、私と夫は数軒のジュエリーショップを回った。
予算的にも問題なく、デザインもどれも綺麗だった。
パンフレットをもらったり、試着させてもらったりして、いくつか候補を考えた。
そして、今日はここで最後にしよう、と言って入った最後のお店…そこで私は『infini』という指輪に出会った。

「あ…」

その指輪に付けられていた『永遠の絆』というゆびわ言葉を見て、突然、色々なことを思い出した。
小学校の頃、家族旅行で泊まったホテルで道子さんに出会い、その優しさと気遣いに憧れたこと。
同じホテルで働けることになり、職場の先輩となった道子さんに、ある日突然「うちの息子どう?」とにっこり笑いながら言われ、すごくびっくりしたこと。
初めてのデートで見たイルカショーと、私が濡れないように守ってくれた夫の優しさ。
プロポーズ、結婚式、新居への引越し…そして、道子さんが亡くなって、今、結婚指輪を探していて…。

「…子、瑛子!」
「え?」
「瑛子、大丈夫?」
「…あ、うん」

夫の声が聞こえ、我に返る。
どうやら少しぼーっとしていたらしい。

「いっぱい見て回ったから、疲れちゃった?」
「…ううん、大丈夫。『永遠の絆』ってゆびわ言葉、いいなって思って」

そう言って『infini』の指輪を指すと、「ご試着なさいますか?」と店員さんに尋ねられた。
試着してみると、不思議なことに、指輪はずっと前からつけていたみたいに薬指にすっと馴染んだ。
夫も同じように感じたみたいで、気付けば「これにします」と店員さんに伝えていた。


「色々回ったのに、最後であっさり決まっちゃったね」
「うん、でもまあ、これも母さんが導いてくれたんじゃないかな。俺達にずっと『永遠の絆』があるように」
「…そうだね」

帰り道、私達は手を繋いで歩く。
時を越え、いつまでもずっと、この絆が続くように。

infini ゆびわ言葉 ®:永遠の絆

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