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大学4年生の夏。
湘南の海を前に、蒼人(あおと)は言った。
「俺は、大切な人たちを守れるようになりたい。
今困っている人たちを、自分の手で助けられるようになりたい。だから」
静かに、でも、力強く。
「卒業したら、幹部候補生学校に行く。そして、海上自衛隊に入る」
そう宣言した彼は、言葉通り、本当に海上自衛官になった。
「親父が、自衛隊で働いててさ。俺もその背中を追いかけようと思って」
ネパールの夜空の下で、私はそう語る彼の横顔を見つめた。
私達が出会ったきっかけは、大学1年の夏休みに初めて参加した海外ボランティアだった。
自衛官を目指す蒼人は物静かな人で、でもその心には確かな情熱があって、私も彼のように、情熱を持って人を助けたいと思うようになった。
彼が将来の夢を話したその夜、私も自分の将来の夢を話した。
「私は…。
たくさんの人を助けられる、看護師になりたい」
看護大学1年の夏。
私はその宣言を聞いてくれた人と、恋に落ちた。
蒼人は人を助けたいという信念を共にする仲間であり、恋人だった。
だから、私達はデートをしながら、お互いの夢や目標を語り合った。
行き先は、海が好きな彼の希望でいつも湘南。
海を見ながら、励まし合い、共に努力して、私たちは互いに希望の職に就いた。
そうして、私たちは共に夢を叶えたけれど…それがきっかけで、その後二人で会える時間はほとんどなくなってしまった。
海を見ると、不安になる。
訓練で数か月連絡が取れなくなることもある彼は、海の上で、今日も無事に過ごせているだろうか。
蒼人なら大丈夫、きっと大丈夫。
会えない間、そう祈りながら日々を過ごす。
陸に帰ってきたときにだけ会える彼は、再会するたびに、肌が黒くなる。
再会するたびに、時々疲れた表情を見せるようになる。
それでも、待ち合わせ場所でいつも目を細めて「会いたかった」って笑ってくれるから。
いつも嬉しくなるし、待っていてよかったって思える。
会うたびにそんな調子だし、会えてもすぐにまた海に出てしまうから…とてもじゃないけど、将来のことなんて考えられない。
それでも蒼人は、私にとって大切なパートナーだ。
気持ちが揺らいだことはない。出会いから5年経っても、10年経っても、ずっと。
そして、出会ってから14回目の夏。
33歳になった私は、今日も無事に戻ってきてくれた蒼人に「おかえり」を言って、湘南の浜辺を歩く。
その日の彼はいつもより無口だった。
返事も上の空で、ぼんやりと砂の上を歩いていた。
何かあったのだろうか…そう心配していると、彼は真剣な表情で私の方を向き、「新しい目標ができたんだ」と話し始めた。
「実は、3佐に昇進したんだ」
ずっと1尉だったけど、やっと昇進できた。
そう話す蒼人に、私の方が嬉しくなった。
28歳で1等海尉になってから5年…3等海佐は、自衛隊幹部の中でも実力を認められた人にしかなれない階級だって、この5年間、何度も聞いていた。
その3等海佐に、彼がついに昇進できたんだ。
「すごい…おめでとう!」
「うん。…それで、次の目標なんだけど」
「うん、なに?」
私はわくわくしながら続きを待つ。
すると。
「涼子を、幸せにしたい」
「え」
「ずっと待っててくれて、いつも笑顔で迎えてくれた涼子を、幸せにしたい。辛い訓練でも乗り越えられたのは、しっかり頑張って帰ってきたいと思えたのは、涼子のおかげだから」
「蒼人…」
「涼子」
彼はそっと、ポケットから箱を取り出し、蓋を開く。
その中には、ブルーダイヤが散りばめられた、海のように綺麗な指輪が収まっていた。
「遅くなっちゃったけど…この海に誓って、必ず君を幸せにする。
だから、俺と結婚して欲しい」
「…!」
大学生の頃と同じ、海への誓い。
でも、あの頃と今の彼は全然違う。
逞しくなった体も、焼けた肌も、深くなった眼差しも。
…こんなに何もかも変わってしまったのに、この気持ちだけは変わらない。
互いを信頼し想い合う、この気持ちだけは。
「はい」
私が頷くと、蒼人は両腕を広げ、思い切り私の体を抱き寄せた。
「ありがとう」
蒼人の声が耳元に響く。
私はうん、と頷きながら、視線の先にある海を眺める。
真夏の太陽に照らされた、その海の色は…これまで見た中で最も深く、最も美しい青色に見えた。
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