Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
俺の名前は久保田秀亮(くぼたひであき)。30歳、男、仕事はフリーのカメラマン。
スタジオでのアシスタントからこの仕事を始め、独立して早4年…おかげさまでけっこうな量の依頼をもらえるようになり、毎日忙しく働いている。
物よりはモデル・芸能人を撮る仕事が多いから、知り合いも多くて、仕事外でも飲みに誘われることが多い。
でも、俺にとって、休日は家で寝だめをするためにある大切な時間。
そういう誘いは全てやんわりと断り、いつも一人、部屋で寝て過ごしていた。
今日も俺は、いつも通り二度寝を済ませ、昼過ぎになってようやくベッドから這い出た。
キッチンに向かい、棚から取り出したコップに牛乳を注いだら、昨晩のうちに作っておいたサンドイッチを頬張る。
こういうものは、前日に作っておくのがいい。休日は思いっきりだらだらしたいから。
マスタード多めのハムとレタスのサンドを平らげた後は、大体いつも、ソファーに座ってテレビを観る。
ソファーには気に入っているクッションが置いてあるので、それを抱えたり枕にしたり、足で捕まえたりしながら、だらだらと一日を過ごす。
これが俺の、フリーになってからの休日の過ごし方だ。
4年前も、一人住人が増えた現在も、この暮らしはずっと変わらない。
変わらなさすぎて不思議なくらいだ。
これまで異なる生活をしていたはずの女性と、今は一緒に暮らしているというのに。
「…また、こんなところで寝てるのか」
「……」
―スー、スー。
返事の代わりに聞こえるのは、穏やかな寝息。
ソファーに陣取り眠る彼女の名前は、遠藤靖子(えんどうやすこ)。
雑誌の編集の仕事をしていて、仕事繋がりで知り合った。
第一印象は、ずっと楽しそうにしゃべっている人、だった。
彼女は雑談でも仕事の打ち合わせでも、大体何でも楽しそうに話す。そして時々真面目な顔になって、「だから今回の取材では、この部分をきちんと伝えたいんです」と言う。
そんな彼女の人柄に惹かれる人間は、俺以外にもたくさんいて…だから俺は、きっと彼女はプライベートでも引っ張りだこで、多くの友人達と遊びに出かけるんだろうな、と思っていた。
しかし実際はなんと俺と同じで、友人からの誘いは全て断り、休みの日は一日中家で寝て過ごしているらしい。
『アクティブに見えて一人の時間が欲しいタイプ』…それは向こうから見た俺も同じだったらしく、意気投合して付き合いはじめた。
「…困ったな」
場所を占拠されていることもそうだが…今日はこれから式場の下見に行く予定なのに、靖子はお気に入りのクッションを抱きながら幸せそうに眠っている。
だから申し訳なさはあったものの、仕方なく起こそうとして…ふと、薬指に光る指輪が目にとまった。
靖子がクッションを抱きかかえているのと同じように、枠がダイヤを包んでいる指輪。名前もそのまま、『coussin』という。
最初は名前を知らないままデザインに惹かれて、その後名前を知った。
「お互いに最初に贈ったプレゼントがクッションだったし、今も名前も知らないまま惹かれたし、何か縁があるのかも」
靖子はそう言って、この指輪を選んだ。
不思議だと思う。
一人だった俺の部屋に、靖子がやってきて、靖子にプレゼントしたクッションが戻ってきて、クッションのような指輪が増えた。
そうして賑やかになったのに…他人とは思えないくらい、彼女は俺の生活に溶け込み、今や欠かせない存在になっている。
「…ん」
そんなことを考えていると、人がいる気配を感じたのか、靖子がゆっくりと瞼を開いた。
ぼんやりした表情で俺の姿を捉えると、ほっとしたように頬を緩める。
「おはよう、秀亮」
俺にだけ見せてくれるあどけない笑顔に、全然早い時間じゃないな、と思いつつ、俺も「おはよ」と答える。
すると靖子は寝ぼけているのかクッションを手放し、代わりに俺に抱きついてきた。
…ああ、こういう時、どうしたらいいんだろう。
式場の下見に行かなきゃいけないのに、目の前に穏やかな空間と、大切な人の温もりがある。
もう今日は外に出なくても、ずっとこのままでいいんじゃないか…思わず俺はそう思い、いや、やっぱり行かなきゃいけないんじゃないか、と思い直す。
しかし、そんな俺の迷いなんかつゆ知らず、寝ぼけたままの靖子は俺をクッション代わりにしたまま「好き」と呟き、その後再び幸せそうに眠りはじめ…。
ああ、もう、いいや。
すっかりノックアウトされてしまった俺は、今日は外出を諦め、彼女と微睡むことにした。
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