Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
「ごめん、この後、ちょっとだけ付き合ってくれない?
行きたいところがあるんだけど」
「え、でも…」
「ごめんごめん。今日だけだから」
とある休日の夕暮れ時。
俺は妻の渚(なぎさ)を連れて、近所の小さな海岸に向かった。
午前と午後で結婚式場の下見を2件済ませ、後は帰るだけ、となったタイミングだった。
「たまにはゆっくりデートでもしたいな、と思って」
二人分の足跡をつけながら、砂浜を歩く。
渚は落ち着かない様子で、少し早口でさっき見た式場の感想を語った。
雰囲気も料理も良かった、けれど何となく決めきれない、と彼女は言う。
「できるだけ早く決めちゃいたいんだけど…」
そんな彼女に、俺は「もう少し見てみようよ。時間はまだあるんだし」と返す。
焦ったって良いことはない。一生に一度のことなんだし、ちゃんと納得できる式場を選んだ方が良いだろう。
「まあ、そうなんだけど…」
「とりあえず、今は一旦忘れよう。せっかく海に来たんだし」
俺はそう言って、渚の顔を海の方に向ける。
赤い夕日に照らされた海はどこか哀愁がありつつも綺麗で、寄せては返す波の音は、少しの間俺たちの心を現実から切り離し、感傷に浸らせる。
デートというのは口実で、本当は、式の準備に焦りすぎて疲れている渚を、少しでもリフレッシュさせてあげたかった。
幸せなはずの結婚式の準備なのに、彼女は何か色々背負いすぎているような気がする。
俺もできることは手伝いたいけど、何でも自分でやりたがる渚は、スケジュール管理から各所への連絡、式場の見学予約などを全て一人でやってしまう。
本人がどうしてもやりたいというので止めないけど、せめてこうして疲れてしまったときは、側で支えてあげたい。
そんなことを改めて思っていると、黙って海を眺めていた渚がぽつりと呟いた。
「海岸って、”渚”ともいうでしょ」
「ん? うん」
渚は彼女の名前でもあり、海岸、海辺を指す言葉でもある。
「だから、みんな私に海が好きか聞いてくるの。私は私なのに、なんか勝手なイメージを持たれてるみたいで…ずっと自分の名前が好きじゃなかった」
「…うん」
「それで、両親にも反抗したりしてた。なんでこんな名前にしたのって、思ってて…。
でも、そうやって色々言われるのって、小さい頃だけだった。
大人になって、いろんな人がいい名前だって言ってくれるようになった。それで改めて考えたの。私、本当に自分の名前が嫌いだったのかなって」
渚は海の方を見つめたまま、言葉を紡いでいく。
これまで抱えてきたたくさんの思いを、一つ一つ、整理するように。
「そんなこと、なかった。
『渚』は、両親が出会った思い出の場所で…それを名前につけてくれたことが嬉しいし、海だって嫌いじゃない。
だから、今さらだけど、ずっと反抗してた両親に恩返しがしたくて。
素敵な結婚式を、プレゼントできたらいいなって、思って」
そうか、ずっと悩んでいたのは、両親のことまで考えていたからだったのか。
焦っていたのも、一人で張り切っていたのも、全部。
…そういうことなら。
「よし。じゃあ、その願いを叶えられる式場を、一緒に探そう」
「え?」
「俺も手伝うよ。渚の両親は俺の両親でもあるんだし。
両親も喜んでくれて、俺たちも幸せになれる、そんな結婚式を目指そう」
「…うん。ありがと」
やっぱり、何としても幸せになろう。納得できる式場を探そう。
愛する妻と、その両親のために。
「じゃあさ、たとえば、こういうのは…」
それから、辺りが真っ暗になるまで二人で話し合った。
話しているうちに、渚の表情から焦りや不安が消えていった。
前日の予報とは裏腹に、結婚式当日は晴天だった。
「本日はお越しいただき、誠にありがとうございます」
会場に立てられたのは、パラソルと椅子。
バージンロードの左右を彩るのは、砂浜。
そして、歩いた先に見えるのは…真っ青な海。
「今回、ビーチで結婚式を行うことにしたのには、理由があります」
マイクを手に取った渚は、その日、皆の前でそうスピーチをした。
「会場をビーチにし、結婚指輪も『Plage』という名前の指輪にしました。苦手だった時期もありましたが…両親と両親にもらった名前が、今は好きだから。
両親の思い出の場所である『渚』を、私たちも思い出の場所にしたかったからです」
渚のスピーチに、ご両親は号泣していた。
そんなご両親を見て、涙ぐむ渚の顔は晴れやかだった。
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