Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
「…『MALIBU』…」
海を、波を思わせるようなその指輪に、目を奪われた。
ブライダルリングのお店で見つけた『MALIBU』の指輪は、少し個性的な形の指輪だった。
規則的じゃない、独特なウェーブはまるで、一点もののハンドメイドのようで…。
「ねえ、私っ、これがいい!」
何かビビっとくるものを感じ、私は隣にいる夫に思わずそう言った。
誰もがイメージする”結婚指輪”とは少し違う形のこの指輪を、今までの私だったらまず選ばなかっただろう。
でも、今は違う。
周りの目なんて気にせずに、自分が好きなものを選んでいいんだって、彼に教えてもらったから。
同い年の彼、智(さとる)と付き合いはじめて2年目の夏。
平日に休みが取れた私達は、仕事に向かう人々と逆方向の電車に乗って、人気のない海に遊びに行った。
皆がこれから仕事をする時間に、折りたたみのビーチパラソルとチェアを持って海に向かう。なんだか悪いことをしているみたいだった。
ビーチパラソルを立て、下に設置したビーチチェアに体を預けると、急にリゾートに来たような気分になった。
智はまだお昼にもなっていないのに、早々にビールを開けた。
海に入るわけでもなく、ただ波の音を聞きながらゆったりと過ごす時間は、贅沢過ぎて、私には少し楽しみづらかった。
そわそわしている私に、彼は言った。
「こういうの、嫌だ?」
「…嫌じゃないけど…」
でも、なんだか落ち着かない。
真剣に朝から晩まで働いている正社員の人達に比べて、自分が遊んでいるみたいで…。
「別にいいと思うけどなあ。俺達が平日にも休みが取れるってだけで、ちゃんと働いてるし、貯金もしてる」
「…うん」
「そりゃあ、平日はみっちり仕事!って感じの正社員も多いのかもしれないけど、正社員だって平日休みの人もいるし…。
派遣とか正社員とか、あんまり気にすることないと思うな」
「…うん」
同じ派遣社員で、彼だってこれまで色々言われてきたはずなのに、この人はいつも堂々としている。
すごいなあ、と思う。気にすることないってわかっていても、私はどうしても、世間の常識や周りの視線に委縮してしまうから。
「もちろん、和美(かずみ)が嫌なら、休日に出かけるんでもいいんだけどさ」
「…すごいなあ、智は」
「ん?」
「いつも”智らしい”っていうか、堂々としてるっていうか…。
私はそういう自分らしさってないし、よくわからないから」
私が思わずそうこぼすと、智は少し悩み、言った。
「んー、俺だって別に、何が自分らしいかわかってるわけじゃないよ」
「そうなの?」
「うん。わかんないけど、不快なことは避けて、好きなことをやっていったら今になった。
自分が正しいかどうかはわかんない。でも、誰にも迷惑はかけてないし、少なくとも、俺は今の自分が好きだから、今のままでいいって思ってる」
「…そっか」
「それが和美から見た”俺らしさ”なら、和美にも”和美らしさ”がいっぱいあるよ」
「…たとえば?」
「不安だって思いつつもついて来てくれる優しさとか、
派遣先でも絶対手を抜かない頑張り屋なところとか、
休み取れたから遊びに来たのに、平日だから他の人に悪いって思ってそわそわする真面目さとか。そういうの全部、和美らしいって思う」
「う…」
確かに全部言われてみればそうだけど、でも長所なのかな、それ。
単に流されやすくて、融通が利かない人間みたいに思えるけど…。
そう思っていると、そんな私の思考を見透かすように智は言った。
「世間から見ていい性格か悪い性格かは知らない。
でも、俺にとってそれは和美の長所で、和美の好きなところなんだ。
だから、無理に変えようとしなくていいし、和美は和美のままでいい。今のまま、こうして一緒にいられたら嬉しい」
…ああ、優しい。優しくて、強くて、温かい言葉だ。
私には勿体なさすぎるほど。
「……」
受け止める強さがなくて、何も答えられないでいると、智は背中に背負っていた鞄からウクレレを取り出した。
『昔はギター弾いてたんだけど、挫折して今はウクレレやってるんだ。やってみると意外に楽しいし、こっちのが個性的だから気に入ってる。』
そう、いつか笑って話してくれたことを思い出す。
この風のように自由で、この海のように優しい人だ。
穏やかな浜辺で、波の音とあまり上手くないウクレレの音を聴きながら、そう思った。
…そしてその日、ずっと流されてばかりだった私に、はじめて譲れない想いが生まれた。
この人とふたりで幸せになりたい。
結婚して、幸せな家庭を築きたい。
誰に何を言われたとしても、この想いを叶えたい。
そう、はじめて思うようになった。
私は私のままでいい…その言葉に勇気をもらった私は、それから少しずつ、今の自分の気が向く方を、今の自分がやりたいことを選ぶようになっていった。
まだ自分に自信はない。自分らしさもわからない。
でも、前よりも今の方が、自分のことを好きになった気がする。
「…どうかな?」
『MALIBU』の指輪に一目惚れのような何かを感じた私は、今は夫となった智の意見を仰ぐ。
彼は私の様子に一瞬目を丸くしたけれど、すぐに笑って答えてくれた。
「うん、すごくいい。
これにしよう。俺も和美が選んだ、この指輪がいい」
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