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とある地方都市の、ある土曜日の午前中。
人の少ないコワーキングスペースの一角で、私は今日もWebデザインの勉強をする。
Web制作会社で働きはじめて4年。もっと余裕を持って仕事していてもいい頃合いなのに、私は要領が悪いのか、未だに仕事中は仕事を終わらせるので手一杯だ。
だから少しでもWebデザイナーとしてのスキルを上げようと、土曜日もこうして勉強している。
「…ふう」
一時間くらい経って集中が切れ、私はコーヒーを入れようと席を立った。
隣の席をちらりと見る。
一年前まではそこにいた彼の姿は、今はない。
「…今、何してるのかなあ」
一緒に勉強していた彼は…達彰(たつあき)君は、一年前まで同じ会社の後輩だった。
私にとって初めての後輩で、なんだか弟ができたような嬉しい気分になった私は、彼に仕事のことを真剣に教えた。
しかし、彼は私とは違い、あっという間に仕事を覚えぐんぐん先へ進んでいってしまった。
今は東京にある本社で、社内で提供しているメインのサービスのデザインを担当していて…もう、雲の上の人だ。
「…はあ」
悔しいという気持ちはないわけではなかった。
でも、それよりも彼は私の大切な後輩だった。
だから、私は真剣に彼を応援し、本社へ送り出したのだ。
私のことが好きだから離れたくない、と言った彼に、私も達彰君のことが好きだからまた会おう、と約束をして。
「達彰君…」
「絵真(えま)さん!」
「え?」
達彰君のことを考えていたら、突然目の前に達彰君が現れた。
私はびっくりして、夢じゃないかと何度か瞬きをする。
「どうして…」
「大事な話があるんだ」
達彰君がいつになく真剣な表情でそう言うので、私は疑問を飲み込み、「何があったの?」と尋ねる。
「絵真さん、俺、こっちに戻ってくることにした」
「え?」
「上の人達には引き留められたけど…俺、やっぱり絵真さんと一緒に仕事がしたいから」
「でも、せっかく実力が認められて、本社に異動になったのに…」
達彰君が戻って来るのは嬉しいけど、素直に喜べない。
せっかくのチャンスなのに、わざわざ私のために戻って来るなんて…。
「…絵真さん」
たぶん、あまり良い表情をしていなかったんだろう。
達彰君はそっと私の頭の上に手を置き、安心させようとしているみたいに撫でた。
「覚えてる?
俺が新人の癖に生意気だ、みたいなことを先輩に言われてたとき、絵真さんが俺の代わりにその人に向かっていって『新人かどうかなんて関係ないじゃないですか!』って怒ったこと」
「…うん」
「俺、絵真さんが守ってくれたことが嬉しくて。
その時からずっと、いつか実力をつけて戻ってきて、今度は俺が絵真さんを守れるようになろうって、そう思ってたんだ」
「…そっか」
その時のことははっきりと覚えている。
他人に、それも私にとっても先輩だったその人に対して、それまでは反対意見なんて言えなかった。
でも、あの時だけは何故か我慢できなかった。
その理由は…。
「…私にとって、あなたは宝物だったから。
上手くいかない職場の中で、初めてできた後輩の達彰君は私にとって、きらきら光る宝物だった。だから、守りたかったの」
「…絵真さん」
私がそう言うと、達彰君は少しの間私を見つめ、ポケットの中から指輪を取り出した。
「俺にとっては、そんな絵真さんが宝物なんだ。これからは一生、俺が守ってあげたい」
「達彰君」
「俺と結婚してくれますか?」
突然の言葉に、私は意味がすぐに飲み込めず、何度か瞬きをした。
でも、彼の姿も、目の前のアンティークのような綺麗な指輪も、何度瞬きしても消えなかった。
嘘みたいだ。
宝物だった彼が戻ってきて、私のことを宝物だと言ってくれるなんて。
「絵真さん」
「あ…えっと」
もう一度呼びかけられ、私はおそるおそる、左手の薬指を差し出す。
薬指に収まるきらりと輝く指輪は、私の新しい宝物になった。
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