Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
俺の彼女は、大の猫好きだ。
そのこと自体には特に問題はない。俺も猫は好きだし、実家で猫を飼っていたこともあるから、猫を可愛がる気持ちは何となくわかる。
だから、部屋が猫グッズで溢れかえっていても、ペット可のマンションで一日中愛猫を可愛がっていても、それは猫好きなら普通のこと。
特に問題はない…そう思っていた。付き合い始めて一か月が経つまでは。
『ネク~!』『ニャーン!』
愛猫のネクが寂しがるからあまり外に出かけたくないという彼女の希望で、デートはいつも彼女の家。
でも、二人で話していても、ご飯を食べていても、気づけばいつも猫が邪魔をする。
更には、彼女は猫が近付いてくると途端に猫スイッチが入ってしまい、俺より猫の方に夢中になる…そんな日々が続き2年が経過した今、俺は不安で仕方がなかった。
彼女はいつも、俺より猫の方を優先する。
それってつまり、俺は猫より愛されていないってことなんじゃないか?
って。
「男として、なんか許せないんだよな…雄猫に一番の座を譲るっていうのは」
猫を愛してやまない彼女だが、俺のことも好きだと言ってくれているし、恋人らしいこともする。
(普段は猫に夢中でつれない彼女が俺に振り向いてくれる瞬間はたまらなく愛しいし、彼女こそ、気まぐれな猫みたいだと思う。)
とはいえ、彼女の一番はいつも猫。
どうしても、そのことに納得できなかった…だから、俺は決めたんだ。
夫婦になるなら、俺が一番なのは間違いない。
だから、思い切って、彼女にプロポーズをしようって。
そして、やってきた運命の日。
俺は大事な話があると言って、彼女の部屋を訪ねた。
「フシャー!」
部屋に着くなりライバルのネクが俺の前に立ちはだかる。
今日は特に噛みついてくるので、このままじゃ話もできないと思い、俺は一旦ネクを連れて部屋の隅に移動した。
「今からリサにプロポーズするんだ。大事な話だから、邪魔するなよ」
彼女に聞こえないよう、俺は小声でネクの説得を試みる。
通じるか不安だったが、無事伝わったのか、ネクは威嚇をやめて黙って俺を見つめた。
「わかったか?」
念のため、もう一度確認すると…ネクはふいっと顔を背けてどこかに行ってしまった。
「おい、ネク」
気になって追いかけようとしたところで、彼女に腕を掴まれる。
「空(そら)くん、ネクと何の話してたの?」
「男同士の大事な話」
「…よくわかんないけど、ネクのこといじめてないよね?」
「大丈夫大丈夫」
俺は彼女を安心させるようにそう言うと、今度はリサとの大事な話、と言って彼女を椅子に座らせた。
俺も向かいに座り、ずっと練習していた台詞を言う。
「君の一番になりたい。だから、俺と結婚してほしい」
この日のために買った指輪を差し出しながら、俺は彼女にプロポーズをした。
猫の手をモチーフとした、文句なしに可愛い指輪だ。
猫グッズに目がない彼女がこれに反応しないわけがない。
「これ…」
予想通り、彼女は指輪に反応した。近くでまじまじと指輪を見た後、俺の方を向き、返事をしようと…。
したところで、ネクがやって来て、俺の膝の上に乗った。
こいつめ、やっぱり邪魔をしにきたな。
そう思った俺は、一旦離れてもらおうと近くにあった猫じゃらしをネクの前で振ってみるが、ネクはまったく興味を示さない。
俺の膝の上に座ったまま、じっと彼女を見つめている。
「ネク…」
そんなネクに声をかけた彼女は、少しの間、何かを確かめ合うかのように真剣にネクと見つめ合った。
そして、それからゆっくりと、自分の気持ちを話しはじめた。
「…ネクはね、臆病で警戒心が強くて、今まで誰かに懐くどころか、近づくことさえしなかったの。
でも、空くんだけは特別みたい。私も、そう」
そう言うと、彼女はネクにではなく、俺に向かって微笑んだ。
「他の人と違って、空くんが側にいると、安心するの。
だからつい、普段通りに振る舞っちゃって…空くんがいるのにネクの方にかまったり、いっぱいネクの話したりしちゃうから、困らせてると思うけど。
でも、いつも隣にいてくれて、すごく嬉しいし、幸せなの。
だから、空くんとこれからもずっと一緒にいられたら、嬉しい」
「リサ…」
彼女の気持ちを、こんなにはっきり聞いたのは初めてで…俺は嬉しくて、少し泣きそうになってしまう。
「…じ、じゃあ」
涙をこらえて、もう一度言う。
「改めて、俺と結婚してくれますか?」
「…うん」
嬉しさのあまり飛び上がりそうになる気持ちを抑えて、俺はリサの細い薬指に指輪を通した。
エンゲージリングのダイヤの肉球に見とれる彼女は、本当に可愛くて、愛しくて。
彼女をもっと笑顔にしたくて、俺は言葉を足す。
「そうだ、これ、マリッジリングをセットでつけると猫の顔になるんだ。
一緒に買いに行きたかったから、買わなかったけど」
彼女が喜ぶように、スマホで指輪のページを見せる。
…しかし、これで彼女の猫スイッチが入ってしまった。
「か、かわいい…!」
明らかに、彼女の目の色が変わった。
体も小刻みに震えているような気がする。
「今すぐ買いに行こう!」
彼女はそう叫ぶと、プロポーズを受けたことなんかすっかり忘れた様子で、出かける準備をはじめだして…ああ、もう。
「俺、やっぱり猫には勝てないのかな…」
さっきまでは泣きそうだったのに、今度はため息が出そうだ。
…でも、彼女のそんなところに首ったけなんだから、仕方がない。
「なぁ、ネク」
「ニャ?」
俺は一人でそう納得し、膝の上で不思議そうに俺を見上げるネクの首を優しく撫でた。
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