Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
恋人である心(こころ)の兄の七回忌は、しめやかに行われた。
お坊さんを呼んで法要を済ませた後は、家族だけのささやかな会食。
心にどうしてもと頼まれたので部外者である俺も同席したが、喪服姿の心は穏やかに両親と会話していて、特に俺が参加している必要もないように思えた。
法事はそのまま無事にすべて終わり、帰ろうとした俺は少しだけ寄っていってと心の部屋に呼ばれた。
言われた通りお邪魔して、俺が部屋のドアを閉めた瞬間…堰を切ったように、心の目から涙が溢れた。
心は俺に抱き着き、泣きながら、震える声でこう言った。
「慎也(しんや)はずっと、そばにいてね」
俺は、震える彼女の小さな頭を、そっと撫でてやることしかできなかった。
「あの、このプラモデルを、最後まで完成させてほしいんです」
5年前、作りかけのプラモデルを両手に抱えて話しかけてきた彼女も、緊張からかぷるぷると震えていた。
塗装工事の仕事の休憩時間。煙草を吸っていた俺は、突然現れた小さな子供に煙を吸わせぬよう、灰皿に煙草を押し付けた。
依頼人は、仕事でリフォームを請け負っていた家の子供だった。
当時高校2年生だった少女からの依頼は正直面倒だったが、断ってもしつこく頼んでくるので、仕方なくプラモを受け取った。
数日後、完成したものを渡してやると、少女は飛び上がって喜んだ。
一体何がそんなに嬉しいんだか。
そう思っていると、彼女は涙を流しながら、笑って俺にお礼を言った。
「兄の形見で、完成させてあげたかったんですけど、私、不器用だから、壊してしまいそうで、怖くて。
作ってくれて、ありがとうございました」
俺に頭を下げた彼女は、本当にか細く、小さくて…俺は彼女こそ、ふとした拍子に壊れてしまいそうな存在だと思った。
その日から、俺は彼女を守りたいと思うようになったのだった。
七回忌以降、心を守りたいと思う気持ちが一層強くなった俺は、心にプロポーズをすることにした。
しかし、困ったことに、プロポーズに必要な婚約指輪の種類が多すぎて、どれがいいのか全くわからない。
心はどんな指輪がいいんだろう。一緒に見に行くべきなんだろうか。でも、プロポーズの時に渡したいし…。
「ん?」
そんなことを考えながら指輪を探していた俺は、Heartという名前の指輪を見て思わず手を止めた。
その指輪にあるゆびわ言葉には、『そばにいてね』と書かれていた。
「…心」
彼女が言ったのとまったく同じゆびわ言葉。
彼女の名前とまったく同じ、Heartという名前の指輪。
これしかない…そう思った俺は、すぐにこの指輪を買いに行くことにした。
一週間後。
俺は再び、心の部屋にやって来た。
「渡したいものって?」
すっかり落ち着きを取り戻し、いつも通り穏やかな表情をした心が、俺に尋ねる。
「これ」
俺は心の身長に合わせて屈み、指輪の入った箱を開いて見せる。
「…!」
「心」
指輪を見て目を丸くする彼女に、俺は優しく話しかける。
「こないだの、そばにいてね、の返事なんだけど。
…俺はずっと、君のそばにいる。
だから、君もずっと、俺のそばにいてほしい」
心は何回か瞬きをした後、はっと思い出したような表情をし、こくこくと頷く。
「慎也、ありがとう…応えてくれてありがとう。大好き」
俺を見上げそう言う心の左手を、俺はそっと持ち上げる。
これからも決して、壊れないように、壊さないように、ずっとそばにいられるように。
俺は優しく丁寧に、彼女の指に指輪を通した。
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