Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
仕事もプライベートも部屋の中でPC三昧。
飯を作る気力もなく、コンビニで済ませることが多い。
そんな男の体型がどうなるかというと…まあ、詳しくは言えないけどヤバイことになってきている。
学生時代はモヤシと言われるほど細かったのに、今はラーメンの具でいうなら煮卵の方に近い体型になってしまっている。
これ以上増えたら、チャーシューになってしまう…健康診断で久しぶりに乗った体重計の表示に焦りを感じた俺は、ランニングを始めることにした。
よし、早速、外に出て…ランニングウェアを探そう。あとシューズも。
それから数日。
俺はようやく外を走り始めた。
新緑の季節。外は晴れていて、ランニングにはまさに最適の気候…だったのだが、途中で色々あって、ランニングではなく犬の散歩をすることになってしまった。
「ワン!」
原因は尻尾をパタパタ振るこの大きな犬にある。
走っていたら、何故か近くを散歩していたこいつに猛烈に好かれてしまい、思い切りどつかれてしまったのだ。
「ごめんなさい…! 大丈夫ですか!?」
飼い主の女性が言うには、普段は温厚なはずの犬が今日は急に暴れ出したのだという。
俺の元に寄ってきてからは暴れていないので、つまり…好かれている、と。そういうことらしい。
「あー…えっと、大丈夫です」
俺はその場を後にしようとするが、犬は一向に俺から離れようとしない。
仕方なく、少し散歩に付き合うことにした。
「すみません…助かりました。この子と遊んでくれてありがとうございます」
「いえ、こんなことでいいなら、いくらでも…」
女の人に感謝される機会なんてないからついそう口を滑らせると、飼い主の紗菜(さな)さんは「本当ですか?」と目を輝かせる。
あれ…この流れは、もしかして。
「じゃあ、もしまた会えたら、またこの子と遊んでくれると嬉しいです。可愛いけど大きいから、私一人だと遊ぶのも大変で」
うわー、やっぱり。
めんどくさいことになっちゃったな…。
そう思ったものの、次の瞬間には口から言葉が飛び出していた。
「いいですよ。俺、休日は大体ここ走ってますんで」
女性に頼み事をされたら、断れない。
男は…いや、少なくとも俺は、そういう生き物だった。
一度かっこつけだしたら、後には引けない。
俺は”休日は大体ここを走ってる”ことにするために、頑張ってランニングを続けた。
あの犬とも、出会ったときは全力で遊んだ。
サモという名前のこのサモエド犬は、とにかくでかい。だから紗菜さんの言うとおり、遊ぼうとするととにかく大変で、疲れる。
でも懐いてくれるので、これはこれですごく可愛い。
メスだったらもっと嬉しかったんだけどなぁ。
「そういえば、今度マラソン大会ありますよね。宗平(そうへい)さんも出るんですか?」
紗菜さんから爆弾発言が投下されたのは、そんな間抜けなことを思っていた時だった。
後から冷静に考えれば、色々理由をつけて出ないことにすれば良かった。しかし、どこまでもかっこつけたかった俺は、気づけば「もちろん」なんて答えてしまっていた。
「じゃあ、お守りをプレゼントしますね。大会中や大会までの間に、ケガをしないように」
彼女はそう言うと、近くの木から葉っぱを一枚取り、不思議な形に折った。
「サンっていう、沖縄で使われているお守りです。
魔除けなので、事故やケガも防げるはず…」
「へー、こういうお守りがあるんですね」
俺が不思議そうに眺めていると、紗菜さんは作った葉っぱのお守りを、俺の手のひらの上にそっと乗せてくれた。
「頑張ってください。応援してます」
出ないことにしたかったけど、ここまでされてしまっては、もう逃げようがなかった。
結局、大会当日、俺は応援に来てくれた紗菜さんの前で無様な姿を見せることになった。
お守りのおかげか、ケガこそしなかったものの、途中から体力が尽きて走ることすらできなかった。
順位も下から数えた方が圧倒的に早い。
もう言い訳することもできず、俺は紗菜さんに正直に話した。
実はランニング初心者で、全然速く走れないということを。
「でも、ケガはなかったんですよね?」
「ああ、はい…お守りのおかげで」
「それなら、良かった」
てっきり幻滅されると思ってたけど、紗菜さんはケガの有無しか確認しない。
不思議に思い、「あの…俺に幻滅とか、しませんでした?」と正直に聞くと、彼女はあっさりと答えた。
「速い宗平さんじゃなくて、頑張る宗平さんが好きなので、大丈夫です」
「いや、頑張り屋でもないです、俺…。飽きっぽいし、どんなことも長続きしないし」
「でも、今は頑張ってるじゃないですか」
「それは、紗菜さんが応援してくれるから…」
そうだ、今続いているのは、紗菜さんが応援してくれるからだ。
最初はただ、女性に応援されることが嬉しかったから、調子に乗っていただけだった。
でも、今は、応援してくれるのが紗菜さんだから続いてる。
紗菜さんが「調子はどうですか?」とか、「疲れているみたいなので、今日はサモの相手はいいですよ」とか気遣ってくれるから、俺は不甲斐ない姿を見せないように、しっかりしよう、もっと頑張ろう、と思う。
不安げな、心配そうな顔よりも、もっと笑顔の紗菜さんが見たいから。
「私、ですか?」
「そうです。俺、紗菜さんが好きだから、紗菜さんを喜ばせたかったんです」
「…!」
「…! あ、ごめんなさい、いきなり。やっぱ忘れてください!」
聞かれてつい勢いで告白してしまったけど、突然こんなこと言ったら、迷惑に決まってる。
俺は慌てて背を向けて走り出した。
「…さん! 宗平さん!」
そんな俺の背中に、大きな声がかけられた。
「…あの! 私、忘れませんから!
…明日も、また会いましょう!」
その言葉に、びっくりして、嬉しくて、混乱して。
喜んで振り向いて抱きしめられればかっこよかったのに、俺はそのまま、逃げるようにその場を後にしてしまった。
あれから、あのお守りはずっと大事に取っておいていたけど、ある日風に流され遠くに行ってしまった。
でも、その頃にはもう、サンは必要なくなっていた。
もっと丈夫で確かなお守りが、2人の薬指についているから。
紗菜と2年半の交際を経て、結婚することになった。
2人で結婚指輪を選ぶ。婚約指輪はシンプルなものにしたけど、結婚指輪は2人ペアでつけるものだから、お守りのようなものがいい…そう思っていた時に出会ったのが、葉っぱの模様が刻まれた指輪、『Fricsh』だった。
結婚指輪が2人のお守りなら、デザインはこれしかない。
俺も紗菜も、『Fricsh』の指輪を見た瞬間にそう思った。
そして、再び新緑の季節になった今日。
俺たちはサモの散歩に、思い出の公園にやって来た。
風がさーっと吹き、木から落ちた葉がサモの頭の上にひらりと落ちる。
紗菜はその葉っぱを拾い上げ、サモの頭を撫でながら言った。
「今度はこの子にサンを作ろうかな。
魔除けになるように…この子にも、良い縁が訪れるように」
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