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Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!

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Ring Story

allier ゆびわ言葉®: 心の調和

2018.02.11

26歳。
もう年齢としてはそれなりで、それなりに恋愛もしてきたし、それなりに彼氏だっていた。
付き合ってきた人たちは、みんないい人たちだった、と思う。
働いていて収入もあって、趣味もあって友達もいて…少なくとも今の恋人のような、変な人はいなかった。
それなのに、私は何故か、今の恋人と結婚まで進んでしまった。


「こだわり梅酒のソーダ割りと美人梅酒ロックでございます」

新しいグラスに差し替えられた頃には既に、テーブルの上は最後に追加で注文したナポリタンだけになっていた。良い感じにお腹も張っている。
きっとこの残ったパスタは全て彼が食べ切ってくれることだろう…そう期待を込めて彼をちらりと見ると、彼は運ばれてきたグラスを自分の顔の正面まで持ち上げ、グラス越しに私の顔を見た。

「美人梅酒って名前面白いね」
「何でグラス持ち上げてるの?」
「いや、この角度からの方が美人に見えるかなあって思って」
「どういう意味?」
「あ!そういえばこのナポリタンさあ」
「今誤魔化したでしょ」

私は雑貨屋の店員で、彼はテレビ局の映像ディレクター。
別々の職種で、かつ彼の休みが不定休で少ないため、一緒に出かけることはあまりない。
それでも、たまにこうして休みが合うとディナーだけでも共にすることがある。
…まあ、ディナーと言っても、近所の居酒屋で庶民的なお酒を飲むだけなんだけど。この時間が私は嫌いではない。

「なんか味薄くない?」

私の言葉を丸ごと無視したシュウくんは、お皿に取ったパスタをフォークでくるくると絡めとりながら聞いた。
お返しに、私も聞かなかったことにしようかな…そう一瞬思ったけど、そうするよりも先に口から言葉が飛び出した。

「私も思ってた!」

そう答えると、シュウくんの口角が満足げに上がる。

「澄香、もうご馳走さま?」
「うん」
「これ食べ切っちゃうよ」
「うん」

私が彼と結婚した理由はたぶんこれだろう。
今までは、ただ、年齢的にちょうどよかったから、綺麗にタイミングが重なったから。それだけだと思っていた。
そろそろ結婚かなと考え始めた時期に、この人がたまたま隣にいたから…勿論それも一つの要因になっていることは間違いない。

でも。

「ふらりと外食に出たときに食べたいものが一緒だったり、選ぶお店の好みが似てたり、私が醤油をかけたいと思ったとき、シュウくんも醤油に手を伸ばしていたり、さ」
「ん?」
「そういうところなんだよ。私、洋画を見に行って字幕か吹き替えか聞かれないままチケットを取られるのはやだし、エンドロールで立ち上がってしまう人とは上手くいかない。そんな小さなこと、でも私にとっては大事なことをちゃんと大事にしてくれるから、いいんだよ。シュウくんは」
「どうしたの、急に語りだしたりして。酔ってる?」
「違う、酔ってるから言ってるんじゃないの」

大丈夫か、と言って顔の前で手を振ってくるシュウくんを、まだ綺麗な結婚指輪が光る左手で払いのける。
指輪は、右肩上がりのラインがきれいなシンプルなものだ。

その指輪を見て、私はふと思い出す。
あのときはただ、上の方まで回り込んで留まっているダイヤモンドに惹かれてデザイン重視で選んでしまったけど、そういえば、ゆびわ言葉みたいなのが付いていた気がする。
ええと、確か…『心の調和』、だったっけ。

「まあでも、息が合ってるって大事だよね。
例えば、俺がやってる情報番組の映像編集だと、ニュースとかクイズとか、番組内のいろんなコーナーに合わせていろんな秒数の映像を用意しなきゃいけないんだけど…。
最適にまとめられた映像が、最適なタイミングで合わさってはじめて、調和のとれた番組ができるんだ」
「何の話?」
「調和の話。俺、澄香といるのが一番しっくりくるんだよな。澄香が何考えてるか、大体わかるし」
「え、そうなの?」
「うん」

パスタを食べ終えたシュウくんは自信満々に頷く。
彼の言葉が本当かどうかはさておき、同じことを考えてる、とは思う。
私がしたかったのも調和の話だ。全く別の人間なのに、シュウくんといるときは私は私のままでいられる。調和が乱れることなく。

「じゃあ、今、私が何考えてるか当ててみて」
「美人梅酒のこと!」
「違う! この指輪にしてよかったなってこと!」
「え? 指輪の話なんてしてた?」

今度こそ無視しようと決めた私は、顔にまるまるとはてなマークを貼り付けた彼を横目に、空っぽになったテーブルを見つめる。
デザートは別腹とは上手く言ったものだけど、私は今まさにその状態だった。
頭の中もなんだかすっきりしたし、最後に甘いものでも食べようかな。

そう思い、メニュー表を手に取ろうとした瞬間、既にメニュー表を持っていた彼がにやりと笑ってこう言った。

「ねえ、澄香。今デザート食べたいとか思ってない?」

allier ゆびわ言葉 ®: 心の調和

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