Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
風呂から上がりリビングに戻ると、妻の紗智が「うーん」と唸りながら手元のメモ帳をパラパラとめくっていた。
テーブルの上には、今日もらってきたパンフレットや担当者の名刺がずらりと並んでいる。
「コーヒー飲む?」
そう声をかけると「飲む」という返事が返ってきたので、俺は二人分のインスタントコーヒーを淹れる。
砂糖多めの方を渡しながら「決まらないの?」と聞くと、紗智はカップを受け取りながら「うーん、気になったのはあるんだけど」と答えた。
「どれ?」
「『赤い糸』のやつ」
「ああ」
あの指輪か…。
確かに、今日見た中で一番良かった気がする。
1週間前、俺は同じ介護施設で働く紗智と結婚した。
俺は介護士、彼女は栄養士だった。
人手不足だったため、紗智は栄養士だったが、時々介護の仕事を手伝いに来てくれた。
本来の仕事ではないはずなのに、紗智はいつもにこにこ笑って入居者のお爺さんやお婆さんたちの話し相手になってくれた。そして話をしつつも、洗濯や掃除などの手伝いはしっかりやってくれた。
何をやるのも遅いと怒られる俺とは違い、気を配りつつも仕事をテキパキとこなす紗智。
そんな彼女に惚れ込んだ俺は、その後猛烈にアタックして…半年かけてようやく恋を実らせ、その2年後に入籍した。
「先に結婚指輪を選びたいんだけど、それでもいい?」
婚姻届を提出し、結婚式までの大まかな日程を決めたその日、紗智は俺にそう聞いてきた。
式の当日まで待つのではなく、できるだけ早くつけたいらしい。
「うん、いいけど…だったらやっぱり、婚約指輪、あげた方がよかったかな」
「ううん、そうじゃなくて、ペアの指輪をつけたいの。なんか、まだ、結婚したって実感わかないから」
「そっか」
「それに、婚約指輪はずっとつけていられないでしょ? 傷とかつけたくないし、ダイヤが落ちたりしないかヒヤヒヤするし」
「…そういうものなの? 憧れたりはしない?」
「うん。結婚指輪だけで大丈夫」
「…わかった」
妻がそう言うのなら、それに従おう。
そう思い、一週間後の今日。
俺たちは、紗智が事前にリストアップしていた何軒かの店に、結婚指輪を見に行った。
「こちらの『Le fil』は、セットでご用意いただくのもお勧めなんですよ。
エンゲージリングとマリッジリング、それにメンズリングの3本を重ねると、おふたりを結ぶ『赤い糸』のように、小さなダイヤが1本の流れで繋がるようになっているんです」
3軒目くらいに訪れた店で、そんな風に紹介された指輪があった。
その店の指輪は少し変わっていて、指輪ひとつひとつに”ゆびわ言葉”という、花言葉のような言葉がつけられていた。
紹介された『Le fil』という指輪のゆびわ言葉は、『飾らない気持ち』。
指輪自体は糸をイメージして作られていて、『紡ぎたての糸のように、何色にも染まっていない飾らない気持ちでいられますように。』という想いが込められているのだそうだ。
指輪についての説明を店員さんから聞いて、俺はこういうのもいいな、これに決めてもいいかな、と思った。
しかし、紗智は指輪をしばらくじっと眺めた後、「すみません、もう少し検討してみますね」と言い、足早に店を出た。
「…?」
何故突然そうしたのかはわからなかったけど、指輪については紗智の希望を優先しようと思っていたので、俺も黙って彼女について行き、その店を後にしたのだった。
「確かに、良かったなあ、あれ。
セットリングって初めて聞いたけど、色々考えて作られてるんだなーと思った」
「…」
「結婚指輪だけの予定だったけど、セットリングにしようか? 俺はそれでもいいけど」
そう紗智に尋ねてみたが、何故か浮かない顔をしている。
「どうしたの?」
「…いや、その、一緒につけてたら邪魔じゃないかなあって」
「大丈夫じゃない? 実際につけてる人もいるみたいだし」
「…私に似合うかな」
「似合うと思うよ」
「…」
「…どうしたの? 何か嫌なところがあるとか?」
気になる指輪、と言った割には妙に遠慮するのが気になりそう尋ねると、紗智は、「ううん! 指輪自体は好きなんだけど…」とまた言葉を濁す。
「けど?」
「…両方買うのはちょっと、贅沢かなって」
そこでようやく、紗智が何を遠慮しているのか気がついた。
「大丈夫だよ、俺が買うから。
給料良い方じゃないけど、それくらいは貯金あるよ」
「でも…」
「セットがいいって思ったんでしょ?
せっかくだし、これにしようよ。一生つけるものなんだから」
「…うん、ありがとう」
後日、購入し出来上がった『Le fil』のセットリングは紗智の指にぴったりフィットした。
喜ぶ紗智の指に、俺は自分の指をそっと近づけダイヤの糸を繋げてみる。
実際に自分たちでやってみると、少し恥ずかしい…。
でも、こんな風にペアの指輪をつけていると、紗智と夫婦になったんだ、という実感がわいて嬉しかった。
「…ありがとう、健一」
隣の紗智も同じように思ったのか、照れたように笑って言った。
「セットにして、良かった」
片想いから結ばれ、想いが実り、結婚することができて…さらに今目の前で、大好きな人が笑ってくれる。
こんなに幸せな瞬間が他にあるだろうか。
「うん。俺も良かった。紗智がそうやって笑ってくれて」
その笑顔を、優しさを、これからもずっと大切にしたいと思った。
愛する妻となった彼女を、これからもこの『飾らない気持ち』のままで。
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