Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
教会は、歴史的建造物であり、西洋文化の塊だ。
白亜の外観に、先端の尖った塔。建物の頂には十字架が高く掲げられ、入口や礼拝堂などに見られる尖頭アーチは、12世紀にヨーロッパで流行したゴシック建築でよく用いられていたものだ。
また、外観だけでなく、内部の椅子や聖書台、ステンドグラスなどの調度品だって当然、歴史的・文化的に価値のあるものだということは間違いないわけで…。
…要するに、教会というのはその全てが、アンティークを愛する私のような人間の心をくすぐるのだ。
だから、同じくアンティークを愛するカメラマンであり、彼氏でもある当真(とうま)に、
「今度教会で撮影があるんだ。普段なかなか教会になんて行かないだろうし、この機会に見学に来ない?」
と誘われて、行かない手はなかった。
当日、入口の前で待ち合わせていた当真と合流し、彼に導かれ中に入る。
まずは小さな部屋から見て回ろう、という彼の提案に従い、私は図書室や集会室などの比較的小さな部屋の見学からはじめた。
この教会にある本棚やテーブル、その他小物のほとんどは、昔実際に英国の教会で使用されていたものらしく、まさにアンティーク!な家具や調度品がたくさんあった。
内心興奮しつつも、私はそれら一つ一つを丁寧に見て回る。
そしてついに、残すは礼拝堂の見学のみ。
礼拝堂といえば、シャンデリアに祭壇、そしてステンドグラス。一体どんな芸術的な一品が見られるのだろう…そう期待しながら、私は礼拝堂の扉をゆっくりと開けた。
ーギィィィ…
しかし、礼拝堂の扉を開けた瞬間、私の頭からはそれまでの探究心がすっぽり抜け落ちてしまった。
代わりに思い出したのは、幼い頃に祖母の家で見た、結婚式の写真。
「あ…」
この写真なあに、と尋ねた幼い私に、祖母は写真を指でなぞり微笑みながら『あなたのおとうさんとおかあさんの結婚式の写真よ』と教えてくれた。
『あなたの両親も、あなたの祖父母である私達も、この教会で結婚したのよ』と。
写真に写っている母のウェディングドレス姿に憧れた幼い私は、私もこれ着たい!と母によくせがんで、母を困らせたものだった。
「…」
祖母が教えてくれた教会の名前とこの教会の名前が同じだったことを、私は今更思い出す。
祖父母と両親が結婚式を挙げた教会のバージンロードを、私はゆっくりと歩く。
父は私が物心つく前に亡くなった。母は私と妹を育てるために夜遅くまで忙しく働いていた。
両親のいない夜までの時間、私は寂しさを紛らわすように本ばかり読み、バージンロードを歩く妄想を膨らませていた。一人暮らしをはじめてからは妄想はやめて、読書の代わりにアンティークグッズを集めるようになった。
アンティークは、いつも懐かしく優しい匂いで、私を癒し続けてくれた…。
「…綺麗」
祭壇の手前に着くと、大きなステンドグラスとそこから差し込む光が私を出迎えてくれた。
眩しさに目を細めていると、祭壇に人影がひとつ増えた。
「恭子」
いつの間にか先回りしていた当真が、私の名前を呼んだ。
「こっちへ」
導かれるまま祭壇の上に上がると、そこに光があった。
それは、どこかアンティークみたいで、とても綺麗な装飾を持つ指輪だった。
「…うん、いい画だ」
指輪に見とれていた私が顔を上げると、当真は両手の親指と人差し指でフレームを作り、フレーム越しに私を覗き込んでいた。
「やっぱり恭子が一番可愛い。撮影しに来た甲斐がある」
「…当真。もしかして、撮影っていうのは」
嘘だったの?
と、最後まで言い終える前に、ぐい、と彼が私を抱き寄せた。
「ちょ、ちょっと…!」
「恭子」
耳元で、彼が私に確認をする。
「昔君が言ってた、ご両親が式を挙げた教会って、ここだよね?」
「…うん」
「だから連れてきたんだ。ここで君に愛を誓いたかったから」
彼は優しく、でも力強く私を抱きしめながら言う。
「もう、寂しい思いはさせない。僕が一生、君の側にいるから。
だから君も…ずっと、僕の側にいてほしい」
「…うん」
祖父母と両親が誓いを交わした教会の祭壇で。
私たちもまた、一生を共にすることを誓い合う。
ステンドグラス越しに差し込む光は眩しい。
光は私には眩しすぎて、照らされている彼も指輪も、いつかは失ってしまうのではないかと、少し怖くなる。
でも、確かに当真は私に、一生側にいることを誓ってくれたから。
私も信じて、一歩踏み出してみようと思う。
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