Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
駐車場に車を停め、ブライダルリング専門店に向かった私と修介は、互いに目を合わせず、無言のままお店の中に入った。
おそらく、こんなに険悪な雰囲気で入店する新婚夫婦は珍しいと思う。
ブライダルリングを夫婦やカップルで選びにくるときは、どんなペアでも大抵は幸せいっぱいのはずだ。
私達も、今朝まではこうじゃなかった。
相手には相手の事情があるし、私だって、大抵のことは怒らない。
たとえ旦那が急に風の向くままふらっとどこかに行ったとしても、またいつものツーリングだな、と思うだけだ。
自由人だけど浮気はしないってわかってるから、連絡なしでそのまま一晩中帰ってこなくても怒らない。
でも、今日のことだけはどうしても許せなかった。
今朝、修介が急に、お互いに貯めようと約束していた新婚旅行の資金を出せなくなったと言いだした。
そこまではいい。その理由が、ネットでかっこいいバイクのパーツを見つけて買ったからだと言うのだ。
「…今、なんて言ったの?」
「ごめん、でも、今しかないって思ったら買っちゃうじゃん。愛花もバイク乗りなら、その気持ち…」
「違う、パーツを買うのはわかる。それは別にいい。
…でも、それって新婚旅行より優先することなの?」
「うっ…」
繰り返すけど、私は大抵のことには怒らない。
別に私だって買うときは買うし、高いパーツを買ったっていい。
でも…私よりパーツを優先するのはさすがに我慢できない。
私はいつだって、可愛い愛車より、修介の方が大切なのに。
本当はそのまま話し合いをしたい気分だったけど、前から取っていた来店予約を急にキャンセルするわけにはいかないので、私達は険悪なままお店にやってきた。
ここに来るまでの車内も、ずっと無言だった。
本当は事前に調べて気に入っていた指輪の話とかしたかったのに、それもできなくてイライラする。
ついでに、気に入っていた指輪をメモした紙も忘れてきちゃったし…。
まあいいや、実際に見ればどれだったか思い出せるはず。
そう思い、私はお目当てのブランドの一つ『AFFLUX』の指輪が並ぶガラスケースを見た。
「わぁ…」
いざ見てみると、どの指輪もキラキラ輝いていた。
事前にいくつか候補を考えておいたのは、正解だったかもしれない。
たぶん何も考えずにいきなりお店に来たら、どれも綺麗すぎて悩むと思う。
「なんて名前だったかな…」
私はひとまず候補の指輪を探す。
聞き覚えのある名前だったはずなんだけど、なんだったっけ。
「…あ、そうだ」
思い出したと同時に、お目当ての指輪を発見した。
『Vogue』…他の指輪とは一味違う、かっこよくてお洒落な指輪。
サイトで一目見た瞬間に、これがいい、と思った。
近代建築に見られる空間をイメージして作られた指輪で、3つのパーツでできている。
ゆびわ言葉は『私の理想』で…って、ああ、何度も見たせいでサイトに書いてあった文章まで覚えてしまった。
これだけ覚えていたのに、どうして名前だけ忘れていたんだろう。
メモにだって、確か大きくマルをつけていたはずなのに…。
「何か気に入ったものはございましたか?
よろしければ、ご試着もできますよ」
そんなことを考えていると、店員さんが声をかけてくれた。
私は「じゃあ…」と『Vogue』の話をしようとして、やめた。
修介の意思を、まだ確かめてないから。
「ねえ、どれがいい?」
私が修介に声をかけると、案の定、「どれでもいいよ」という返事が返ってきた。
「どれでもいい、じゃない。修介の意見を聞いてるの」
二人でつける結婚指輪に「どれでもいい」なんて選択肢は存在しない。
いくらケンカしてたって、一生に一度の大事な買い物だ。
二人で話し合って、二人が気に入った指輪をつけるべきだと思う。
「……」
私が目で自分の意思を伝えていると、修介は少し考えた後「んー、強いて言うならこれかなあ」と言った。
それは、私が一目惚れした『Vogue』の指輪だった。
「…本当に?」
「うん、パーツっぽくてかっこいいし…
…って、あ。ごめん…」
パーツ、という今一番言ってはいけない言葉を聞いた気がしたけれど、もうそんなことはどうでもよかった。
「よかった…! 私もこれが気に入ってたの!」
修介が同じ指輪を気に入ってくれたことが、嬉しい。
「では、今ご試着のご用意いたしますね」
さっそく試着させてもらい、つけ心地もよかったので即決してしまった。
ああ、よかった。今日はケンカもしたけど、いい買い物ができた。
「…あれ? こんなところにあったんだ」
家に帰ると、テーブルの下に忘れてきたメモが落ちていた。
記憶通り、やっぱり『Vogue』にマルがついていた。それも大きく二つも。
しかも読み仮名まで振ってあって、「俺もかっこいいと思う!」ってコメントまでついていて…って、これ。
「…修介の字じゃん」
そう気づいた瞬間に、納得した。
どうしていつも「どれでもいいよ」って何でも私に譲る修介が、今日はこれがいいって言ったのか。
知ってたからなんだ。私のお目当ての指輪が『Vogue』だったってことを。
「……」
いつもへらへらして、風の向くままどこにでも行ってしまうくせに、私が「寂しい」って電話をすると、修介はすぐに帰ってくる。
一緒にツーリングに行った帰り、修介はトイレに行く振りをしてコンビニに寄って、いつも私のために温かいコーヒーを買ってくれる。
「『私の理想』は…」
私の理想の人は、相手に負担をかけないように、見えないところで気遣う人。
へらへらしてるけど、なんだかんだで優しくて、誰よりも相手のことを考えている人。
愛する妻の気持ちを、いつも自分より優先しちゃうような人。
…そんな人なんだということは、本人には言わないでおこう。
私よりパーツを優先したこと、まだ許したわけじゃないし。
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