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Ring Story

Pure ゆびわ言葉 ®: 純愛

2019.01.31

1つ年下の彼女、有希と交際をはじめて3年。
年齢的にも丁度良いし、そろそろ切り出すタイミングだな、と思った。

ちょうど1ヶ月後には、有希の27歳の誕生日がある。
この日しかない…そう思った俺は、思い切って婚約指輪を買った。

『pure』という名前の、中央にダイヤモンドが一粒はっきり留められた、王道のデザインの指輪だ。
完成した指輪を受け取ったとき、いよいよ俺は、彼女にプロポーズをするんだと思った。

プロポーズ前日。
俺は指輪の箱を開け閉めし、何度もセリフの練習をしながら、怖い、と思った。
受け入れてもらえなかったらどうしよう。
そんな思いが、思わず胸をよぎる。

俺はイケメンじゃないし、金持ちでもない、何の特徴もない普通のサラリーマンだ。
俺よりもっといい男は、正直、山ほどいる。

でも、何の取り柄もない俺のことを、有希は好きになってくれた。
だから、俺はそんな彼女のことを、一生守っていきたいと思う。


有希の誕生日であり、プロポーズ当日。
彼女を連れて訪れたのは、初めてデートをした公園だった。

あの日、俺は初めて彼女の手を握った。
互いに汗ばんで、「ごめん」って言い合ったあの日から、俺は何も成長してない。

でも、有希といろんなところに行って、たくさんの思い出ができた。
テーマパークで一日中遊んだり、おすすめのカフェを巡ったり、映画館のオールナイト上映イベントに行って、朝まで一緒に映画を見たりした。
春は近所でささやかなお花見をして、夏は花火大会に行って、秋はレンタカーを借りてドライブをして、冬は慣れないスケートに挑戦したりもした。

初めて訪れたスケート場で、二人とも上手く滑れなくて、二人して転んだ。
情けなかったし、少し恥ずかしかった。
でも、有希は笑って起き上がり、俺に言ったんだ。
『一緒に挑戦してくれてありがとう』って。

その笑顔を見たとき、俺は強く思った。
ずっとこの子と一緒にいたいって。

「いつも笑顔で、恥ずかしがり屋で、実はちょっと寂しがり屋で、怖がりで、でも本当は、俺よりずっと、勇敢で強い」
「…?」
「そんな有希と、これからも、ずっと一緒にいたいと思った」

思い出の公園の噴水の前で立ち止まった俺は、初めてデートをした時と同じように、手の汗をズボンで拭いた。
彼女はそんな俺を、黙って見つめ、待っていてくれる。

「…」

受け入れてもらえなかったら、と考えるとすごく怖い。
怖いけど、今こそ…。
…今こそ、一生に一度の、勇気を振り絞る時だ。

「だから、俺と、結婚してください!」

俺はそう言って、ポケットから出した指輪の箱を開ける。
何度も開け閉めした箱は、タイミング通り、スムーズに開いてくれた。

「…っ!」

有希は指輪と俺を交互に見て、驚き、目を見開く。
…それから少しして、慌てたように、「は、はい!」と返事をした。

「…よ、よかった…」

彼女の返事を聞いて、肩の力が一気に抜けた。
思わずその場にへたり込みそうになったけど、どうにか持ちこたえる。

「ごめん、びっくりして…」
「こっちこそごめん、突然。
…ありがとう。こんな俺を、受け入れてくれて」

ぎゅっと抱きしめると、有希も俺を抱きしめ返してくれる。
そして、俺の腕の中で、「ううん」と首を横に振った。

「”こんな”なんて言わないで。
敦は私にとって、一番大切で、大好きな人なんだから」
「うん。 …うん。ありがとう」

有希の言葉を噛みしめながら、俺は心の中で誓う。
俺の心を支えてくれる有希のことを、これからはずっと、俺が支えていくということを。

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