Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
「おはよう、輪島! 今日のランチ売上どうだった?」
とある土曜日の14時過ぎ。
いつも通り店内で売上のチェックをしていると、店のオーナーである日比野 雅史(ひびの まさし)が店にやってきて、私に声をかけてきた。
私・輪島 光(わじま ひかる)が従業員として働くタイ料理店「アティット」は、11時から14時までランチ営業をした後、ディナータイムまで一旦店を閉める。
だから今は、店内で堂々と売上の話をしても問題はない。
「新メニュー好評でしたよ! お客さんも入ってたし」
「そうか、よしよし」
私の報告にオーナーは満足そうに頷くと、にやりと笑って言った。
「じゃ、今日はこれで営業終了!
光、ちょっと付き合って」
「え? でも、これからディナータイムの仕込みが」
「店の皆にも常連さんにも、もう伝えてあるから」
「そんな、いきなり言われても」
「いいから。もう店閉めたから敬語も名字呼びもナシで」
「ちょっと、雅史」
わけがわからないまま、私は雅史に手を引かれ外へと連れ出される。
そのまましばらく歩いて辿り着いたのは、この辺りで一番広い公園だった。
「付き合ってすぐの頃、サンドイッチとコーヒー買って、ここでピクニックしたじゃん」
「うん」
「あれ、すげー良かったな、って思って」
よく晴れた昼下がりの公園を歩きながら、雅史が言う。
二年前、私と彼は付き合い始めた。
その前から彼のことは好きだったけど、オーナーと従業員が恋愛なんてしちゃいけないと思っていたから、ずっと告白できずにいた。
でも、ある日店の皆に後押しされて、勢いで告白することになった。
彼は私の告白に対し、『実は、俺もずっと迷ってた』と言った。
『立場的に良いことだとは思えない。
でも、好きだって気持ちも変えられない』
最終的に、私たちは『公私混同しない』というルールの下で付き合うことにした。
仕事のときはオーナーと従業員として、プライベートのときは恋人同士として接する。仕事のときは相手を苗字か役職で呼ぶ。プライベートでは名前で呼び合う。そんな決まりをいくつか作り、それを守って過ごしている。
「それで?」
「だから、次は持ち帰れて気軽に食べられるメニューとか出そうかな!って思うんだけど、どう思う?」
「…」
「光?」
「…今はプライベートなんじゃないの?」
「…あ。ごめん」
「まあ、いいんだけどさ」
とはいえ、やっぱりオーナーと従業員だから、こんな風にプライベートでも仕事の話になったりすることもある。
それはそれでいいんだけど…わざわざプライベートと言って連れ出したんだから、もっと他の話ないのかな、とつい思ってしまう。
「ごめん、なんか緊張しちゃって、つい」
「緊張?」
「うん。えーと、あのさ」
「…何? 何か言いづらい話?」
「いや、その…そう! 今までありがとうって、言いたくて」
「え、何、急に。私クビになるとか?」
「いや、そうじゃないけど」
今日は少し挙動不審な雅史は、辺りをぐるぐる回りながら日頃の感謝の気持ちを伝えようとする。
「光が入ってくれてから、店がすごく明るくなったからさ。
お客さんも増えたし、光に会いに来る客もいるぐらいだし」
「私は何にもしてないよ。お客さんがいい人なんだって」
「そんなことない。…で、それで」
「うん」
「俺自身も、光にいっぱい助けられてるし、その…
これからも、店のことも俺のことも、照らして欲しい、って、思って」
「…?」
「だから、その… 光!」
何が言いたいのかわからず反応に困っていたら、雅史は突然叫びだした。
「これからも、ずっと俺と一緒にいてくれ!」
そう言いながら突き出してきた手の中に、眩しく光る指輪が見えたとき、私はやっと彼が言おうとしていることがわかった。
「…本当に、私でいいの?」
しばらく悩んだ後、私は彼に恐る恐るそう尋ねた。
「私、料理できないよ? 頭悪いし、計算も苦手だし、見た目派手だし、迷惑かけるかもよ?
できることなんて、ホール係くらいしかないよ?」
すると、私が真剣にそう言ったのにも関わらず、雅史はぷっと吹き出した。
「笑うことないじゃん!」
「ごめん、だって、そんな遠慮の仕方すると思わなくて」
「うるさいなー、私だって真剣に悩んだんだよ今!」
「うん、わかってる。光のそういうとこ、俺めっちゃ好きだもん」
「へ?」
え、なにその唐突な告白。
そう思い私が一瞬フリーズしたその瞬間、雅史は私の手を取り、薬指に指輪を通した。
「ちょっ」
「光は、俺の側にいてくれるだけでいいの」
「…雅史」
「返事は?」
「…わかった」
「よし」
雅史は私の返事を確認すると、急に大きなため息をつきながらその場に座り込んだ。
そして大きく息を吸い込み、空に向かって大声で叫ぶ。
「あー、緊張した!!!」
「…ぷっ」
その様子がおかしくて、私は思わず吹き出してしまった。
すると、「笑うことねーじゃん!」とおんなじ台詞を返された。
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