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Ring Story

romance ゆびわ言葉 ®:ふたりのストーリー

2018.09.16

「できた!!」

夜遅くまで部屋でパソコンをいじっていた俊(しゅん)がそう叫ぶ声が聞こえたので、私は何だろう、と思い彼の部屋に向かった。

「どうしたの?」

彼にそう声を掛けつつパソコンの画面を覗き込むと、見えたのは動画のプレビュー画面。
どうやらそれは、一週間後の結婚式に使うプロフィールムービーのようだった。
最近ずっとパソコンに向かってると思ったら、これを作ってくれていたんだ…。

「千尋、一応チェックしてみてくれない?
ホントは当日に見せた方がサプライズ感あるんだろうけど、最初に千尋に見せたいからさ」

俊がそう言って私に椅子を勧めるので、私は早速椅子に座り、動画の再生ボタンを押す。
すると、冒頭からいきなり変な字幕が表示された。

『好きになったのは、職場の先輩の妹…の、親友でした(笑)』

「ちょっ、何この字幕」
「いや、面白いかなーと思って。さ、次々」

びっくりして思わず一時停止ボタンを押してしまったけど、後ろにいる俊が「とりあえず最後まで見て」と再生ボタンを押したので、私は一旦動画の続きを見ることにする。

『GWの予定を聞かれ、チャリで一人遠出しようと思っている、と話すと、そんなの予定じゃねえ!と言われた(笑)
「GWと言ったら、皆で温泉だろうが!!」という先輩の謎の主張と剣幕に押され、先輩たちについていくことになった。』

『でも、そこから僕の運命は変わった。』

続けて表示された字幕の後に出てきたのは、皆で温泉宿に行った時の写真だ。

「あー、温泉! 懐かしい」

写真には、いつも一緒に行くメンバー6人が写っている。
私と、私の親友であるあやか。それから、あやかの実の兄であるタカ兄と、タカ兄の親友のユウト。
元々この4人でよく行っていた旅行に、この時から、俊ともう一人女の子が加わり、すごく賑やかになった。

タカ兄と俊は同じ旅行会社に勤めていて、俊の方が後輩だ。
だから、俊にとって私は、先輩(タカ兄)の妹(あやか)の親友に当たる。

『初めてのグループ旅行。個性の強すぎるメンバー(笑)
なかなか馴染めなかった僕を助けてくれたのが、千尋だった。』

字幕が表示されると、集合写真に写っている私がアップで表示された。
そう、出会ったばかりの俊は人見知りというか、本当におとなしい男子で…全然喋らないし、俯いていることが多かったから、馴染めるように色々とサポートした。
宿でお酒を飲みながら話をしたのも、その一環だった。

『日本酒に酔い潰れる僕…と、全く酔ってない千尋』

「ねえ、字幕」
「いいからいいから。酔ってないのは事実でしょ」
「まあ、酔ってはいないけど」

でも、俊はお酒が弱く、本音を話してもらう前に酔い潰れて寝てしまった。
だからこの日は2合しか飲んでないし、2合くらいなら私はほぼ酔わない。
…なんて言ったせいで俊には酒豪扱いされてるけど、そんなに強いかな。

そんなことを考えている間に、また写真が切り替わる。
今度は夏に皆で北海道旅行に行ったときの写真だ。

「北海道ねー…色々あったよね」
「距離がありすぎて目的地に着けなかったり、千尋以外の女子二人がケンカしたり」
「大変だったなあ」

また切り替わる。
『秋。初めての海外!』

「北京良かったよね! すごく面白かった」
「うん、めっちゃはしゃいだ記憶ある」

もう一度写真が切り替わり、私が一人で写った写真に。

「…?」
『この頃から千尋のことが好きだった。レンズ越しに見た千尋はすごく可愛かった』
「え、そうなの?」
「うん、まぁ」

そして、写真の中の季節は冬へと変わる。

『そして、冬。
みんなが気を遣った結果、僕と千尋は二人きりになった。
告白は、めっちゃ噛んだ。
でも、彼女は笑ってOKしてくれた。』

「…あー」

うん、覚えてる。
皆で待ち合わせしたのに俊以外誰も来なくて、俊にどうしよう?って聞いたら、俊は何故かめちゃくちゃ緊張していて。
ガチガチな声と表情で告白されたけど、その一生懸命さが嬉しくてOKした。

それから…。
動画には、たくさんの二人きりの写真が表示された。

付き合い始めてから、私と俊は皆と一緒の時以外にも遠くまで出かけるようになった。
彼の趣味に付き合い自転車で旅をしたり、私の趣味で東北に行き、地酒をハシゴしたりした。
念願のヨーロッパにも行った。それから…まだまだいっぱい。

たくさんの写真が連続で映し出された後、最後に大きな字幕が表示された。

『バラバラの環境で育った僕たちは、旅の中で、たくさんの愛を育み…そして今日、幸せになります。』

字幕の後には、ウェディングドレスを着た私とタキシードを着た彼の写真が画面いっぱいに表示された。
事前に撮っておいたもので、薬指には、一足早く結婚指輪をつけている。

ふたりのストーリーが輪のようにひとつになり、∞(無限大)に広がっていきますように…そんな想いが込められているという『romance』の指輪。
指輪の形も∞になっていて、デザインもおしゃれだからすぐにこれ!と決めた指輪だった。彼もすぐに賛同してくれた。


「…ありがとう」

プロフィールムービーを見終わった私は、改めて俊に、これまでの感謝の気持ちを伝える。

「一緒にストーリーを作ってくれて」
「うん」
「幸せになろうね」
「もちろん。これからもずっと、千尋のこと、幸せにするから」

そう言って両手を広げた俊に、私は思いきり抱きつく。

結婚式一週間前。
少し早いけど、私たちは自宅の一室で、二人だけの誓いのキスを交わした。

romance  ゆびわ言葉 ®:ふたりのストーリー

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