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半休を取って役所に行き婚姻届を提出した私と慎太郎さんは、帰りに喫茶店に寄った。
コーヒーを飲みながら話すのは、結婚式の準備のこと。
式場は決まったから、今日は式に誰を呼ぶか、招待状はどちらがいつまでに作るか、具体的な内容や期日を固めていく。
ついさっき籍を入れて無事夫婦になったのに、私も彼も、その事を特別喜んだり祝ったりはしない。
他のカップルに比べたら淡泊かもしれないけど、私達はこれでいい。
私達にとって、結婚するということは、人生を共に過ごすパートナーを決めるということなのだから。
「元村慎太郎と言います」
結婚相談所からの紹介で出会った慎太郎さんは、出会ったときから無口で無愛想な人だった。
短く自分の名前を名乗った彼は、それ以降自分から何も話そうとしない。
結婚相手を探しているはずなのに、まるで相手には全く興味が無いみたいで…なんだか変わった人だな、というのが、慎太郎さんに対する第一印象だった。
そんな状態だったので、その日は会話というよりも、慎太郎さんへの質問コーナーのような形で話をした。
彼は特に緊張しているわけではないみたいで、質問には普通に答えてくれた。
質問から得られた答えは、年齢は32歳で、職業が銀行員であること。
それから、趣味はなく、強いていうなら仕事が趣味であること。
父も銀行員で、弟が二人いるということ。
真面目すぎるほど真面目で、いくら聞いても深堀りしたくなる答えが出てこない。
反応に困り、「真面目な方なんですね」と言うと、「そうですね」と更に真面目に返された。
仲良くなれる気はしなかったけど、沈黙が訪れるのは耐えられなかったので、私は思いついたことをとりあえず質問し続けた。
唯一印象的だったのは、結婚相手に求めるものは何かという質問に対する答えだった。
「当たり前の事を、当たり前に出来る人がいいですね」
どういう意味だろう、と思ったけど、彼が次の予定があると言って席を立ったので、その日はそれ以上質問を続けることはできなかった。
そんな感じで終わった1日だったので、もう会うことはないだろうと思っていたけど、何とその後も会いたいと連絡が来た。
何度も接しているうちにわかったことは、慎太郎さんは恋愛をしたいわけではない、ということだった。
彼は、人生を共に生きるパートナーが欲しいから結婚したいのだそうだ。
そしてそこには、恋愛は必須ではない。信頼関係があればそれでいい…というのが、彼の考え方らしかった。
他の人がどう思うかはわからないけど、少なくとも私は、この考え方が嫌いではなかった。
確かに、恋愛と結婚は別物だ。どんなに好きでも相手が自分に嘘をついたり自分を裏切ったりする人であれば、一緒に暮らしてはいけない。
信頼関係が大事というのは、その通りだと思う。
結局、慎太郎さんとは月に一度、決まった日に決まった時間だけデートをした。
恋愛を求めていない彼とのデートが特別盛り上がることはなかったし、特に愛情を確かめ合うような出来事もなかった。
でも、当たり前のように荷物を持ってくれたり、お会計を済ませてくれていたり、人混みの中で手を繋いでくれたりするところは、何故だか妙に安心した。
そして、出会ってからちょうど1年が経った、12回目のデートの日。
待ち合わせをしていた喫茶店で、慎太郎さんは突然指輪の入った箱を取り出し、私の目の前に差し出した。
「加奈子さん、僕と結婚していただけませんか」
それ以上何も言わないので、私は彼に、何故プロポーズに至ったのか理由を聞いた。
すると、最初に会ったときに聞いた言葉を、彼はもう一度はっきりと言った。
「あなたが信頼に足る、当たり前の事を当たり前に出来る人だからです」
「…当たり前のこと、とは?」
「時間を守る事や身だしなみに手を抜かない事。それからきちんと、会ったときに挨拶を返してくれる事です。
当たり前の事ですが、毎回これがちゃんと出来る人に、僕はほとんど会ったことがありません」
「……」
「だから、あなたに人生のパートナーになって欲しいんです」
差し出された箱には、中央のダイヤと2本のラインが美しい指輪が入っていた。
不思議なデザインだけど、とてもしっかりしている…まるで慎太郎さんのような。
「Rainbowという、虹の架け橋をイメージした指輪だそうです。こういうのには、僕は詳しくないんですが」
そんなことを考えていたので、橋、という言葉を聞いて納得した。
そうだ、慎太郎さんは橋のような人だ。
誠実で、しっかりしていて、一緒にいると、妙に心が落ち着く人で…。
…そして、長い人生を共に歩くパートナーなら、きっとこんな人がいい。
そう心から思える人だ。
「…プロポーズ、お受けします」
「本当ですか?」
「はい。よろしくお願い致します」
プロポーズも入籍も、やり取りはすごくシンプルで淡泊だった。
それでも慎太郎さんは、役所から喫茶店までの道中、私の手をしっかり握ってくれていた。
他のカップルと違い、恋愛から始まる結婚じゃなくても。
私達は確かに繋がっている。互いを信じる、心と心で。
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