Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
「パパ、おかえり!!」
仕事から帰ると、いつもより更に元気な声が俺を出迎えた。
出迎えながら、小さな体で俺に全力で体当たりしてくる。5歳になる息子の海人(かいと)だ。
「おー、海人。今日はやけに元気だな」
「うん、あのね、ママのたからものを見つけたの!」
「たからもの?」
「うん、いまおねえちゃんがもってる!」
「えー、何だろう」
海人に腕を引っ張られ、俺は慌てて靴を脱ぎながらお姉ちゃんの元へ向かう。
うちのちょっとおませな長女、紗千花(さちか)10歳。
小さい頃はパパにべったりだったが、いつの間にかすっかり女の子になって、ママ派になってしまった。
リビングに行くと、その紗千花がママを問い詰めていた。
手に持っているのは…指輪?
「ねえ、ママ何で?」
「うーん、それは…色々あって」
「何が色々なの…あ、パパ!」
紗千花は俺を見つけると、「これ見て!」と手に持っていたものを見せる。
「ママの机の引き出しに指輪があったの。これ、婚約指輪と結婚指輪だよね?」
「…ああ、そうだな」
「何でつけないのか聞いてるのに、ママったら全然答えてくれなくて」
「……」
「ね、パパも気になるよね? パパはいつもつけてるのに」
うーん…確かに、正直、気にならないといえば嘘になる。
妻の沙羅は、結婚した当初は指輪をつけていたのに、紗千花が生まれた頃から全く指輪をつけなくなった。
一体何故なのか、理由は気になる…が、妻が言いたくなさそうにしているのを無理やり聞き出すのはよくない。
きっと何か事情があるんだろうし、ここは妻の味方になろうと思う。
「いや、パパは別に気にならないかな。これはパパがつけたいからつけてるだけだし」
「えー」
「それより、パパがどうやってママと結婚したのか、気にならない?」
「え、気になる気になる!」
「きになるきになるー!」
話を逸らすと、子ども達が上手いこと食いついてくれた。
よかった、これで何とか妻を守れそうだ。
「よーし、じゃあ、まずはパパとママが出会った時の話からしようか」
「ちょっと、パパ…!」
黙って聞いていた妻が、そこで初めて俺を止めようと口を開いた。
恥ずかしがり屋の妻は俺との馴れ初めの話をしたがらない。でも、俺はパパとママがどうやって出会ったのかを、前から一度、子ども達に伝えたいと思っていた。
「いいじゃないか。紗千花と海人が生まれるきっかけにもなった、大切な話なんだから」
「…まぁ、そうだけど…」
納得しきれない妻はまだ何か言おうとしていたが、子ども達が「はやくはやく!」と急かしてくる勢いの方が強く、諦めた。
だから俺は話すことにしたが、これは大事な話だ。しっかり聞かせるために、俺は絵本を読むみたいに「むかーしむかし…」と話し始めた。
「むかーしむかし…パパは、今よりずっと、長い距離を運転する仕事をしていたんだ。
夜遅くに遠くまでトラックを走らせて、荷物を運ぶ仕事だな」
「うんうん」
「その中で、俺が一番楽しみにしてたのが、途中にあるパーキングエリアっていうところで食べられるソフトクリーム。場所によって違う味のソフトクリームが食べられるんだよ」
「へー!」
「で、そのソフトクリーム屋さんで働いてたのが、ママだったんだ」
俺は当時を懐かしみながら話す。
「ママのいたところは海沿いだったから、青いソフトクリームが売ってた」
「えー! 青ー!?」
「そう、青。変な色だけど、意外とおいしいんだよ。
それで、俺はレジにいたママに向かって、ソフトクリームを注文したんだけど」
「ちょっ…!」
話の続きがわかったのか、慌てて妻が止めようとするが今は気にしない。
「ママ、ソフトクリームを作るのが上手くなくて、ちょっと変な形のソフトクリームができちゃったんだ」
「あははは!」
「ママ、不器用だからなー」
「もう…!」
子ども達に笑われ、ママは恥ずかしそうに俯く。
「でも、パパは形なんか気にしてなかったから、そのまま食べた。
それがきっかけで、ママと話すようになったんだ」
当時、未来の妻は俺に「ごめんなさい…!」と何度も謝った。
そして余程気にしていたのか、その後俺が店に寄る度に謝ってくれた。
本当に、俺は全然気にしていなかったのに。
でも、そんな彼女の一生懸命さに惹かれたのも事実だ。
だから、今思えば、ソフトクリームが崩れててよかったと言える。
「ある日、パパは免許を持っていないママのために、ママを助手席に乗せてドライブに出かけたんだ。
海が見える道をぴゅーんって走った。そしたらママ、すごく喜んでくれて。
それで俺、ママのこと好きになったんだよね」
「え、なんで?」
「ママを見てると、なんだか俺の方が嬉しくなっちゃって。喜んでくれるママ可愛いって思っちゃって…」
「…もう、やめてよ、パパ」
真っ赤になる妻に、海人は「ママ、熱あるの?」なんて聞いている。
こうやって、当時の話をすると未だに顔が赤くなるところが可愛い。
こんなこと言ったらますます真っ赤になって大変だろうから、言わないけど。
「まあ仲良くなったきっかけはそんな感じ。で、色々あって今に至る、と」
「ねえ、じゃあ、プロポーズは?」
「そりゃあまあ、俺からビシッと言ったよ。『これからは俺が君を支えるから、俺の妻になってくれ』って」
「きゃー!」
俺がそう言うと、紗千花は自分のことのように盛り上がる。
耐えきれなくなった妻がついに「ちょっと、もういいでしょ!」と叫んだので、俺は「ママのために、もうおしまいにしてもいい?」と子ども達に聞く。
「もうお腹いっぱい。ごちそうさま」
「ごちそうさま?」
どうやら紗千花は満足してくれたみたいだ。
海人も、意味がわからないままお姉ちゃんの真似をしている。
「よーし、じゃあ二人とも、歯みがきして寝よう。話してるうちに遅い時間になっちゃったし」
「はーい!」
そうして、子ども達を部屋に戻らせ、俺も自分と妻が寝る部屋に向かった。
「…ありがとう。指輪をつけていない理由、聞かないでくれて」
寝室の電気を消して少し経った頃、隣で横になっている妻がぽつりと呟いた。
「ん? いいよ、本当に気にしてないから」
「…実はね、サイズが合わなくなっちゃって」
俺は聞かないことにしようと決めていたが、妻は急に理由を話した。
理由を聞いて、正直…。もっと早く聞いていればよかったと思った。
「…なんだ、つけたくないとかじゃなかったんだ」
「そんなわけないじゃない」
「いや、よかった。正直ちょっと不安だったから」
聞かなかった理由の一つには、本当は、聞くのが怖いという気持ちもあった。
妻が指輪や俺に興味がなくなっていたらどうしよう…そんな不安があったからだ。
「ごめんね。太ったせいで入らないなんて、恥ずかしくて言えなかった」
「恥ずかしがることないって。あの時から二人も子ども産んだんだし、体型が変わったって不思議じゃないよ」
「…でも」
「それに、実はこの指輪、無料で直せるんだ。保証がついてるブランドの指輪にしたから」
「そうなの?」
「うん。だから、直しに行って…それで、またつけてくれたら、嬉しい」
事情があるなら、指輪をしていなくても気にしない。
でも、指輪をしてくれていたら、もっと嬉しい。
「うん。できるなら、勿論」
「よし、じゃあ、今度お店に持っていこうか」
そう妻と約束をして眠る。
その日はいつもより良く眠れた気がした。
「よかった。あなたを選んで」
直してもらった指輪を受け取った帰り、妻は突然そう言った。
「ん? どうした、突然」
「この指輪の『広い心で』っていうゆびわ言葉を見た時、そう改めて思ったの。
思い返せば、本当に心の広い、いい人に恵まれたなーって」
俺達が出会い、デートを重ねた場所である海をモチーフにした『OCEAN』の指輪。
この指輪には、『広い心で』というゆびわ言葉がついている。
「ソフトクリームがぐちゃぐちゃでも、指輪をつけてなくても許してくれるし」
「別に、大したことじゃないよ。
それよりも、俺みたいなののプロポーズを受け入れてくれて、子ども二人も産んで育ててる沙羅の方が、絶対心が広いって」
「えー、だって海人の方は、あなたの方がほとんど面倒見てくれてたじゃない。あなたの方がずっと心が広いって」
「いや、あんなギャンギャン泣くヤツらにずっと付き添って大変だったのは、沙羅の方だから」
「でも…」
何故かどちらが心が広いかの言い争いになりながら、俺と妻は家に帰る。
しかし、その言い争いは家に着いた瞬間に終わった。
「「おかえり! パパ、ママ!」」
大変だったけど、二人で支え合って育てられてよかったと心から思える…そんな二つの”たからもの”の声が、俺達を出迎えてくれたから。
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