Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
「んー、どんなのがいいかなぁ」
高価な指輪がずらりと並んだガラスケースを前に、マナミはそう言って、俺を振り返る。
「ねぇ、どれがいいと思う?」
「…俺は降参。マナミの好きなの選んで」
どれ、と言われても、こういうのは何が良くて何が正解か全くわからない。
大体、俺がつけるものじゃないし…。
「ちょっと! 愛が足りないよその答えは。
こういうのは多少興味がなくても一緒に選んだりするものだよ」
「そうなの?」
「そうだよ。…さっきのプロポーズが本気だったんなら、ね」
マナミはそう言うと、僅かに不安そうに俺を見た。
あっさり受け入れてくれたように見えたけど…よく考えたら、彼女の方が今の状況に戸惑っているに決まっている。
それはそうだ。彼女と恋人になったのも、プロポーズをしたのもついさっきの話なのだから。
「ほんとに骨折したの!? 大変だね」
一ヶ月前。
病室にやって来たマナミは、事故で骨折した俺の右足を見て、普段と変わらないテンションでそう言った。
そして、俺への遠慮も許可もなく、勝手に備え付けのテレビに持参したDVDプレーヤーをセットし始めた。
「おい、何やってんだ」
「大丈夫、先生や看護師さんに許可取ったから」
「いや、そういうことじゃなくて」
「先週DVD化されたばかりのインド映画があるなら観るでしょ、普通」
「…まあ」
俺がついそう返すと、あっという間にDVD鑑賞会の準備が整ってしまった。
俺とマナミは、骨折する前の毎週末と同じように、二人でインド映画を観る。
マナミとは数ヶ月前、中学の同窓会で再会した。
同じクラスで話の合う奴だったが、進学先も違ったし、特に恋愛感情を持っていたわけでもなかったので、卒業後に会うことはなかった。
同窓会では、中学の時と同じように変なイルカのキーホルダーをつけていた。ちょっと変わったセンスの奴だったが、だからこそ同じく変わり者の俺と話が合った。
同窓会の直後、観たかったインド映画が公開になったので、ふと思い立ってマナミを誘ってみた。
インド映画というマイナーなジャンルについて、こいつとなら語り合えるかもしれない…そう思ったからだ。
映画の趣味まで一致していた俺達は、一緒に映画を観に行き感想を語り合った。
そんなことを繰り返しているうちに、俺達は何でも話し合える親友になっていた。
マナミは毎週末俺の部屋にDVDを持ってやって来るようになった。
そんな彼女と、俺は漫画を貸し借りし、ソファーでゴロゴロしながら映画を観た。
どんなに近い距離にいても、特別な感情を抱くことはなかった。
異性である以上に、俺達は気の合う親友だったし…特に、恋愛とかそういうものを、互いに求めていなかったからだ。
親友であるマナミは、俺が入院した後もとにかく俺の世話を焼いた。
「何か要るものない? 大丈夫?」
元々、世話好きな性格ではあった。
俺の部屋に来るときもいつも何かしら持ってきてくれたし、いつも適当にメシを食っている俺を心配し、冷蔵庫にあるだけの材料でメシを作ってくれることもあった。
だから、普通だと思っていたけど…。
長い入院生活で、いつも自分を気にかけ世話を焼いてくれる存在が、貴重な存在だと気がついた。
入院したばかりの頃は、大学の頃の友人や仲の良い同僚、お世話になっている上司がよく見舞いに来てくれた。
皆代わる代わる訪れては、花やお菓子を持ってきてくれた。
しかし、心配して見舞いに来てくれる人は徐々に減り、やがて誰も来なくなった。
マナミだけだった。3日に1回、退院まで一度も欠かさず見舞いに来て、俺を明るく励ましてくれたのは。
だから、深夜に時々やって来る足に激痛が走る瞬間や、もう二度と歩けないんじゃないかと不安になってしまう瞬間、俺はマナミのことを思い出すようになった。
彼女の顔を思い浮かべると、不思議と力がわいた。頑張ろう、と思えるようになった。
俺の側には彼女がいてくれなければ駄目なんだと、その時ようやく気がついた。
退院の日。
「あのさ」
「ん?」
松葉杖をつきながら歩く俺は、隣で支えてくれるマナミに世間話のように切り出す。
「このまま一緒に暮らさない?」
「リョウの家で? 別にいいけど」
マナミは当たり前のようにそう答えた。
それはそれで嬉しいけど…俺が伝えたいのは、そういうことじゃなくて。
「あー、えっと、そういうことじゃなくて。
…ずっと一緒に暮らしたい、って話」
「え、プロポーズ? 付き合ってもいないのに?」
「いや、変なのはわかってるんだけどさ。
なんか、マナミがずっと必要な気がするんだ。俺の人生には」
「……」
俺がそう言うと、マナミの顔からふっと笑顔が消えた。
真剣とも、ぼーっとしているとも取れる表情で、彼女はじっと俺の顔を見つめる。
「…あー」
暫くして、彼女はどこか間の抜けた声を出した。
「言われてみれば、私もそうかも。リョウの世話一生焼いてそう。
でも、全然嫌じゃない」
そして、「何だろう。変だね、この気持ち」と言って笑った。
こうして、プロポーズをして恋人になった俺達は、帰宅してすぐジュエリーショップに向かった。
急すぎるとは思った。でも、今指輪をプレゼントしなければ、また親友に戻ってしまいそうで、何となく怖かった。
…そして、今に至るわけだけど。
「…これもダメか。
んー、じゃあ、こっちのウェーブみたいな形のは?」
「『Crest of wave』?」
「そう」
本気なら一緒に選べという彼女の言葉に従い、俺は指輪を適当に見繕い彼女に提案する。
しかし、マナミが気に入る指輪は一向に見つからない。
本当に俺が選んでいていいのだろうか…。
そう思っていると、試着した彼女が突然「これがいい」と言ったので、俺は驚いて彼女を見た。
「え、ほんと?」
「うん。付けてみたら『これ!』って思ったの。綺麗だし、凜々しさっていうゆびわ言葉もかっこいいし」
指輪を試着した左手をくるくると回しながらそう言うマナミの姿に、俺はつい心の声を表に出してしまう。
「凜々しさ、か。似合うな」
「私がかっこいいって? 女らしくないってこと?」
すると案の定、すぐに噛みつかれた。
違う違う、と俺は両手を挙げて降参のポーズをした後、ここまで尽くしてくれた彼女に、感謝の気持ちを込めて言った。
「そうじゃなくて。
…どんなことも一緒に乗り越えてくれる、頼りになる女性ってことだよ」
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