Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
同じ貿易会社に勤める彼と付き合いはじめて3年。
具体的な話はまだ出ていなかったけど、そろそろ彼と結婚したいな、と思い始めていた。
彼は営業、私は事務。部署は違うけど、お互い仕事は上手くいっている。お金もずっと貯めてきたから、出産や子育てで一時的に仕事ができなくなっても大丈夫だと思う。
年も私が27、彼が28。結婚するのに丁度いい年齢だ。
だから後は、彼の気持ちを確かめるだけなんだけど…何度デートを重ねても、彼の口からは一向に将来の話が出ない。
思い切って、次に会ったとき、私から話を切り出してみようかな。
…そう思っていた矢先、何と彼が海外に駐在することに決まってしまった。
『海外で活躍できる人間になりたい。海外の人が自分を指名して取引してくれるような、そんな影響力のある営業になりたい』
そんな目標に向かってずっと真っ直ぐ頑張ってきた彼にとって、今回はまたとないチャンスだ。
応援しないわけにはいかない。
でも、遠く離れたカナダに4ヶ月間も行ってしまうと聞いて、寂しくて、辛かった。
彼を引き止めることも、自分の気持ちを言い出すこともできず、結局私は黙って彼を見送った。
彼がいなくなったオフィスでも時計の針は変わらず進む。
私はできるだけ無心で事務の仕事をこなし、4ヶ月が過ぎるのを待った。
忙しくなったのか、はたまた他の理由があるのか。
彼からの連絡は、時が経つにつれ少しずつ減っていった。
4ヶ月後、彼は逞しくなって帰ってきた。
彼は現地での成果を嬉しそうに語り、生活を楽しそうに語り、素敵なお土産を持ってきた。
私はずっと待っていた彼が帰ってきてくれたことが嬉しくて、甘えたくて、あれこれデートプランを考え、彼に提案した。
でも、全て断られてしまった。
「ごめん、来週からまた4ヶ月、カナダに行くことになったんだ…。
だから、日本にいる間にしかできないことを色々やっておきたい。
一緒にゆっくりできなくて、ごめん」
そんなつもりじゃないってわかってるのに、突き放されたような気がして悲しかった。
彼が目標へ向かうたび、私の元から離れていってしまうようで、怖くなった。
彼を素直に応援できない自分が嫌になった。
それから、彼が再びカナダに発つまでの1週間、私は彼に連絡を取るのをやめた。
彼からの連絡も無視した。
拗ねているだけだってわかってる。
でも、どうしても素直になれなかった。
彼がカナダに発った2週間後、家に小さな箱が届いた。
送り主の欄には、彼の名前が書かれている。
「…何だろう」
無視しようかと思ったけど、一応中身を見てみようと箱を開けた。
箱の中には『SEAGULL』という名前の、カモメのようなシルエットの指輪が入っていた。
「…婚約…指輪?」
中央に輝くダイヤモンドを見た瞬間に気づき、言葉を失った。
それから、後悔した。見送りに行かなかったことを。
彼はちゃんと私のことを想ってくれていたのに…。
謝らなきゃ、と思いながら指輪を眺めていると、ふと、箱と一緒に小さな紙が入っているのを見つけた。
開いた中に書かれていたのは、見慣れた彼の手書きの文字。
彼から私へのメッセージだった。
『由梨へ
日本にいる間に渡せなくてごめん!
プロポーズしたかったけど、間に合わなくて…。
帰った時に改めてプロポーズしたいから、それまで預かっていて欲しい。
聖二』
私はすぐに彼に電話し、嬉しかったこと、帰ってくるまで待っていることを伝えた。
それから、連絡を無視したこと、見送りに行かなかったことを謝った。
急に悲しくなって、寂しくなって、拗ねてしまって…私がこれまでの自分の気持ちを一気に伝えると、彼は「ごめん」と謝った。
「トンボ帰りになっちゃったことも、一緒にいられなかったことも。
寂しい思いさせちゃって、ごめん」
彼は全て受け止めて謝ってくれた。
それから、『SEAGULL』の指輪を贈ってくれた理由を話してくれた。
「カモメも俺と同じで、夏はアラスカとかカナダにいて、冬になったら日本に帰るから、いいかな、と思って」
それから私は、4ヶ月後の冬まで、カモメを待ち続けた。
2度目の駐在が終わった11月。
帰ってきた彼に、もうどこにも行かないでほしいというと、彼は首を横に振った。
「ごめん、本格的に、カナダに赴任することになった。次は向こうの支社に3年間、行く予定なんだ」
「どうして、結婚するって約束したはずじゃ…」
「だから、由梨」
私の言葉を遮り、彼ははっきりと言った。
「一緒に来てほしい。
家族として…妻として、一緒にカナダに来てほしい」
「え…」
「手当もつくし、そこそこいい暮らしはできると思う。仕事は何とか現地で続けられないか、会社に聞いてみる。したくないならしなくてもいいし…。
文化も違うし、最初は色々大変だと思う。でもできるだけサポートするから。寂しくさせないようにするから」
彼はそこまで一気に口にした後、じっと私の目を見て言った。
「だから、これからはずっと、俺の側にいてほしい」
「…!」
問題はたくさんあった。
でも、それよりも…彼がそう言ってくれたことが嬉しかった。
「…だめかな」
沈黙する私を不安に思った彼がそう呟いたので、私は首を横に振る。
「…ううん。
上手くいくかわからないけど…それでも、私はあなたと一緒にいたい。あなたと一緒に行きたい」
そう言って彼に抱きつくと、彼の更に逞しくなった腕が、そっと私の体を包んでくれた。
それから、2週間の赴任準備期間の間に、私と彼はお互いの両親に挨拶し、籍を入れ、お揃いの『SEAGULL』の結婚指輪を買った。
彼が再びカナダに発ってからは、私の渡航準備がはじまった。
必要な書類を提出し、健康診断やワクチンなどを受けながら、向こうに持っていく荷物をまとめていく。
渡航前に、彼と一緒に選んだ『SEAGULL』の結婚指輪が家に届いた。
彼が選んだボーイズの結婚指輪は、私のレディースの結婚指輪と同じ形だ。結婚指輪は夫婦で形が違うこともよくあるけど、彼はいつも私と同じ気持ちでいられるように、と私と同じ形の指輪を選んだ。
婚約指輪と同じくカモメのシルエットに似た形をした結婚指輪は、ふたつ並べると、2羽のつがいのカモメのようにも見える。
大海原を優雅に力強く舞い、遠い異国の地で豊かに暮らす…私達も、そんなカモメみたいになりたいと思った。
彼が発ってから3ヶ月後、私は彼の後を追い、カナダへと飛んだ。
越冬が終わり、カモメが再びカナダへ戻る頃。
私もまた、カモメの結婚指輪を手に、愛する人の待つ地へ飛んだ。
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