Ring Story「ゆびわ言葉®」で繋がる愛の物語をAFFLUX(アフラックス)でチェック!
「理子(りこ)。俺と、結婚してほしい」
夜、星の見える高台の上で、私は太一(たいち)にプロポーズされた。
小箱に入った綺麗な指輪が、私の前に差し出される。
「……」
「綺麗でしょ。理子に似合うと思って買ったんだ」
「うん、綺麗。…でも」
「でも?」
「ごめん。返事は一旦、考えさせて」
「……え?」
大好きな人からのプロポーズ。
まさか自分がされるなんて思ってなかったから、すごく嬉しい。
嬉しいけど…でも。
「……」
私はそのプロポーズを受けていいのかどうか、迷っていた。
翌日、私は病院の受付の仕事をしながら、太一のことを考える。
太一のことは好きだ。ライブハウスの音響スタッフとして一生懸命働いていて、細身のイケメンなのに優しくて、力持ち。
たまに下らない冗談を言って、私を笑わせてくれたりもする。
こんな素敵な人と結婚できたらいいなって、ずっと考えていた。
…でも。
彼は仕事の他に、妹さんの子どものお守りもしている。
シングルマザーである妹さんの子どもは1歳半。やんちゃな男の子で、妹さん一人で家事をしながら育てるのはなかなか難しい年頃だ。だから、時々太一が手伝いに行っている。
重い音響機材を持って長時間働かなければならない音響スタッフの仕事に、1歳半の子どものお守り。
そんな忙しい中で結婚して、本当に大丈夫なんだろうか。
結婚はしたい。私は太一のことが好きだし、彼も私を大事にしたいと言ってくれている。
でも…これ以上無理に頑張ったりして、体を壊したりしてしまわないだろうか。私にはそれが、何よりも怖い。
「あの…」
そんな事を考えながら事務作業をしていると、受付に人がやってきたので、私ははい、と返事をして相手を見上げる。
すると…。
「…あ」
「理子さん、少しお時間ありますか?」
そこにいたのは、太一の妹、沙弥(さや)ちゃんだった。
すぐに昼休みの時間になったので、私は少しだけ病院を抜けて、病院のすぐ隣にある公園のベンチで沙弥ちゃんの用事を聞くことにした。
子どもが砂場の方に歩いて行ったのを見届けながらベンチに腰掛けた沙弥ちゃんは、唐突にこう切り出した。
「あの、理子さん。お兄ちゃんと、結婚してあげてくれませんか」
「え?」
「昨日、お兄ちゃんがプロポーズしたけど良い返事がもらえなかったって聞いて…。理子さんは、お兄ちゃんのこと嫌いですか?」
「ううん」
「じゃあ、私のせいですか? 私がお兄ちゃんに頼りきりだから、理子さん、遠慮しちゃったんじゃ」
「沙弥ちゃんのせいじゃないよ。まだ結婚は早いかなって思って…ちょっと迷ってるだけ」
今はまだ、結婚しない。
それが、彼にとっても沙弥ちゃんにとっても、一番良い答えであるような気がした。
…でも、沙弥ちゃんはその答えに納得してくれなかった。
「早くないです」
「沙弥ちゃん?」
「お兄ちゃんは今日までずっと、私のために頑張ってきてくれた。もう充分に頑張ってくれたから、だから私、今度はお兄ちゃんに幸せになってほしいんです」
沙弥ちゃんはそう言い、自分ももう子どもの親なのだから、いい加減兄離れします、と宣言した。
「できるだけお兄ちゃんに手伝ってもらわなくてもいいように、頑張ります。
だから、遠慮せず、幸せになってください。お兄ちゃんも、理子さんも」
そう言って沙弥ちゃんは立ち上がり、「帰るよ」と声をかけながら子どものいる砂場へ向かった。
「…充分頑張ってきた、か」
沙弥ちゃんの言葉を思い出しながら私は帰宅し、『着けなくてもいいから、とりあえず、プレゼントだと思って受け取って』と太一に言われた指輪を、改めてもう一度見る。
「…綺麗な指輪だけど、どこの指輪なのかな」
何となく気になって調べてみる。すると、”coquelicot ゆびわ言葉 : いたわりを君に”という言葉を見つけた。
「いたわり…」
ずっと仕事に家族のことに、頑張ってきた彼。
そして私とのこともちゃんと考え、プロポーズまでしてくれた彼。
もう充分頑張っているのに、更に今度は、私をいたわりたいのだと言う。
「…なんで」
そこまで頑張るの。忙しいはずで、お給料だってそんなに多くないはずで、それなのに、こんな素敵な指輪と言葉をくれるなんて。
あなたをいたわってあげたいのは、私の方なのに。
「返事しに、行かなきゃ」
私は彼に連絡をして、家を飛び出した。
あなたを幸せにしたい。そんな気持ちを、薬指に纏って。
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