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私には、毎年1月に楽しみなイベントがある。
年に一度の「ガレット・デ・ロワ会」だ。
この時期にしか売っていない大きな丸いケーキ「ガレット・デ・ロワ」を週末に恋人と2人で食べるというこのイベントは、今年で3回目。
甘いもの好きな今の彼と交際をはじめてから、自然とはじまった。
最初の年は2人で1個ずつ買って、2週連続で食べた。
しかし、ケーキの中でも特にガレット・デ・ロワが大好きな私達は、2個でもまだ足りず、翌年は3週連続で3個食べた。
そして第3回目となる今年、ついに1ヶ月丸々、週末にガレット・デ・ロワ会をすることになった。
ガレット・デ・ロワの本場、フランスでは1月中はずっと食べるらしいから、ある意味本場に近づいたのかもしれない。
パイ生地とクリームのハーモニーがたまらないガレット・デ・ロワだけど、唯一不満だったのが、サイズが大きすぎて1人だと何個も食べられないところ。
元々パーティー用のケーキだから仕方ないけど、できればいろんな種類のガレット・デ・ロワが食べたいなあ、といつも思っていた。
だから、私と同じくらい甘いものが好きな彼と付き合うようになってから、大好きなガレット・デ・ロワを何種類も食べられるようになって嬉しい。
「よーし、切るよ!!」
1月最後の週末、ガレット・デ・ロワを切り分ける啓太(けいた)はいつも以上に気合いが入っていた。
理由はわかっている。ここまで3週間、ケーキの中にひとつだけ入っているフェーブを、何故かすべて私が引き当ててしまっていたからだ。
4回もやっているのだから、1回くらいフェーブを取りたいだろうと思う。
フェーブというのは、ガレット・デ・ロワの中にひとつだけ入っている人形やそら豆、アーモンドなどのこと。
フランスではこれが当たった人はその日だけ王様になれて、皆から祝福されるんだとか。
私達もそれに倣って、フェーブが当たった人は王様ということで、ひとつだけ相手に願い事を言える、というルールを勝手に作って楽しんでいる。
「ついに来た!! 俺が王様だ!!」
4回目にして、そのフェーブがようやく彼に当たった。
…実は切ったケーキの断面からフェーブが見えていて、それとなく彼に譲ったんだけど、気がついていないようで良かった。
「じゃあ、願い事言うから」
「うん」
「俺と、結婚してください」
「…え」
その言葉と共に差し出されたのは、3つのダイヤモンドが中央に光る、ピンクゴールドの可愛くて綺麗な指輪。
突然のことに驚いて言葉を失っていると、啓太は私に、こう問いかけた。
「初めてまどかが俺を手伝いに来てくれた日、覚えてる?」
「…うん」
「ほんとはさ、俺、仕事辞めようと思ってたんだ。あの日」
「え…」
「でも、まどかが励ましてくれたから、もうちょっとだけ仕事続けようって思ったんだ」
「…」
そう言われ、私は彼と初めて出会ったときのことを思い出す。
職場の2年先輩である啓太と付き合ったきっかけは、営業として働く彼の事務作業を手伝ったことだった。
彼はいつもたくさんの仕事を抱えていて、夜遅くまで働いていた。
私がコーヒーを差し入れし、手伝いますから頑張りましょうね、と声をかけると、啓太はコーヒーを一口飲み、それから何故か泣いてしまった。
理由はよくわからないけど、励まさなきゃ、と思った私は必死に彼を励まし、彼の仕事を手伝った。
仕事が終わると彼はありがとうと何度もお礼を言って、私の両手をぎゅっと掴んだ。
その手の温かさを、今もまだ覚えている。
「やってもやっても終わらない仕事がつらくて、向いてないし、もう辞めようって思ってた。
でも、あの時まどかが声をかけてくれて、心配してくれたから…まどかのために頑張ろうって思った」
その日以降、私は時々彼の仕事を手伝いに行くようになった。
でも、それも少しの間だけで、1ヶ月もすると手伝うことはほとんどなくなった。
彼自身が成長して、1人で仕事を片付けられるようになったからだ。
「あの日辞めずに済んだから、今の俺があるんだ。
…だから、まどかとの出会いは、運命の出会いだったって思ってる」
「…そっか」
啓太の言葉を聞きながら、私も思い出す。
初めて手伝った次の日に、彼がお礼にと言ってケーキを買ってきてくれたとき、運命を感じたことを。
「…実はね。私もあの日、どこかからあの店のケーキ落ちてこないかなーって思ってた」
「え?」
「直前に電話対応で叱られて凹んでて…甘いケーキでも食べたいなーって思ってたの。
だから、ケーキをくれたとき…しかも、そのケーキが私が1番好きなお店のケーキだったとき、本当にびっくりしたし、嬉しかったんだ。
だから、つい、今度一緒にケーキ食べに行こうって誘っちゃったの。もしかしたら、運命の出会いかもしれないって思って」
たかがケーキでそう思うなんて、我ながらおかしかったと思う。
でも、結果的に、それは運命の出会いだった。
啓太とはびっくりするほど食べ物の好みが合った。好きなお店も一緒だし、好きなケーキも一緒。気を使わずに話せるし、話しているとすごく楽しい。
他人とこんなに気が合って、ずっと一緒にいられる気がするなんて…やっぱり、運命としか言いようがないと思う。
「まどかも、運命の出会いだって思う?」
「うん」
「…じゃあ、俺と、結婚してくれる?」
「…うん」
私が頷くと、啓太はピンクゴールドの綺麗な指輪を、そっと私の指につけてくれた。
4人分くらいはありそうなケーキを完食して、すっかりお腹いっぱいになった私はその場に少し寝転んだ。
「くるしい~」とか言いながらお腹をさすっていると、「俺ももうお腹いっぱい」と言いながら隣にやってきた彼が、さっきのプロポーズのネタばらしをしてくれた。
「実は、最初からずっと、王様になったらプロポーズしようって決めてたんだ。…でも、全然なれなくてめっちゃ焦った」
「え、じゃあなれなかったら、プロポーズしてなかったってこと?」
「…めちゃくちゃ怖くて、不安だったから、無理だったかも」
「…そっか。じゃあ、やっぱり…」
「ん?」
「なんでもない」
…やっぱり、あのとき私がフェーブを譲ったのも、結ばれる運命だったからなんだろうな。
断面からちらりと見えていたフェーブのことを思い出しながら、私はひとり納得した。
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