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Ring Story

asayake ゆびわ言葉®: 一日の始まり

2017.08.05

「俊也君、大変なの!亜沙美が倒れて病院に運ばれて…!」
夕方、同棲している彼女の母親から電話がきた時、俺は心臓が止まるかと思った。その日ばかりは、休めない仕事を放り出して病院に向かった。

病院のベッドで亜沙美は目を閉じて眠っていて、このまま目覚めなかったらどうしよう、と思った。幸い、その後すぐに目覚めて命に別状はないと言われたけど、ストレスによる胃潰瘍らしく、「どうしてケアしてあげなかったの」と彼女の母に怒られた。
一週間入院することになった彼女の着替えを取りに家に帰ったとき、部屋のあまりの綺麗さと、既に出来上がっていた夕食を見て涙が出た。仕事もしているのに、彼女は掃除も料理も毎日こなしていた。どうして俺は、彼女が無理をしていたことに気付けなかったんだろう。

亜沙美の部屋に入ると、お気に入りのバイクのヘルメットが飾られていた。付き合いはじめの頃は、よく二人でバイクに乗って、朝焼けを見に行ったっけ。でも、今は忙しさを理由に、二人で遊びに出かけることさえしていなかった…。

亜沙美に着替えを届けて、明日の仕事のために帰って寝た。でも眠れなくて、次の日はやけに早く目覚めた。亜沙美のいない朝は、家の中がやけに広く、寂しく感じた。

それから一ヶ月。
回復祝いに、今朝は亜沙美を海に連れてきた。ガレージから引っ張り出してきたバイクを浜の近くに停めて、二人で歩く。
「懐かしいね」と笑う彼女は、今日はいつも以上に楽しそうだった。

「亜沙美」
「なに?」
「ずっと頼り切りで、ごめんな」
「なに、どうしたの、急に」

もう元気だし、大丈夫だよ―無理をさせ、入院までさせてしまったのに、何もなかったかのように明るく振る舞う彼女の横顔が、朝焼けに照らされる。
いつも支えてくれる彼女を、これからは俺も支えたい。そんな気持ちを示すために、俺は彼女の前に指輪を差し出した。

「亜沙美。ずっとこうして、二人で朝焼けが見たい。もう一人だけ、つらい思いはさせないから。俺と結婚して欲しい」

その瞬間、ずっといろんなことを我慢してきた彼女の目から、優しくて温かい涙がこぼれた。何度も頷き、泣きながら左手を差し出す彼女の薬指に指輪を通す。
指輪は朝焼けに照らされ、きらりと眩しく輝いた。

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